エラジタンニンを豊富に含むゲンノショウコは,浅く煎じたものを瀉下作用として,深く煎じたもの止瀉作用として経験的に用いられているが,その整腸作用機序に関しては,腸内細菌への影響を含めて未だ科学的根拠が明示されていない。ゲンノショウコの煎じ方の違いに伴って,成分組成がどのように変化しているのか,定量NMR法を用いてエラジタンニンをはじめとする関連ポリフェノール成分と主要な糖分,有機酸の一斉定量分析方法を開発し,論文発表した。続いて,ゲンノショウコの各エキスについてin vivo実験系による腸内環境改善効果の検証を試みた。高脂肪食を投与し,腸内環境を乱したマウスに,整腸作用を有する民間薬のゲンノショウコ短時間抽出エキスおよび長時間抽出エキスを投与し,腸内環境改善作用を検討した結果,菌叢解析結果を,群内の平均値に直して表示したところ,ゲンノショウコ短時間および長時間エキスよりは若干弱いが,高脂肪食によってFirmicutes門が増えてしまうところを抑える効果が示された。本研究では実験期間が2週間であったが,さらに長期間実験を行うことで,腸内環境改善効果がよりはっきり現れる可能性が示唆された。上記効果の作用機序を検討するために,腸管上皮における生体防御作用機序の指標であるIgAとムチン含量の増加効果を検討したが,それらの結果からは顕著な効果を見出すことはできなかったが,菌叢解析ではゲンノショウコ摂取によって弱いながらも腸内環境改善効果がみられることが示された。今後さらに実験デザインを考慮することで,エラジタンニンの腸内環境改善効果を実証できる可能性が示唆された。
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