研究課題
薬用植物「カンゾウ(甘草)」は世界で最も使用量の多い薬用植物である。カンゾウ(Glycyrrhiza uralensis)は中国および周辺諸国に自生のマメ科植物で、現状では生産国の野生採集などに頼っており高品質なカンゾウの安定供給は重要な課題である。カンゾウの主薬用成分はトリテルペノイド化合物のグリチルリチン酸である。グリチルリチン酸含有率の低下による品質の劣化が憂慮される。二次代謝化合物の生合成機構がグリチルリチン酸量に及ぼす影響は未だ不明の部分が多い。生合成遺伝子と生成化合物とを対応させて生合成のメカニズムを明らかにすることは、医薬品原料としてのカンゾウを効果的に生産することに有効である。本研究では、トリテルペノイド化合物の生合成酵素遺伝子の解析、発現制御によってトリテルペノイド生成を制御してカンゾウの品質と生産性を向上させることを目的として本研究に取り組んだ。①カンゾウにおける唯一の外来遺伝導入手法である毛状根組織培養系の誘導手法の改良および確立を行った。植物組織へのAgrobacterium rhizigenesの感染条件検討を行いGFP蛍光を有する形質転換根培養細胞を作出した。②カンゾウの培養細胞(ストロン培養物)においてトリテルペノイド骨格C-28位酸化の機能を担うシトクロムP450モノオキシゲナーゼの1種であるCYP716A179を新たに見出した。CYP716A179はオレアノール酸、ウルソール酸、ベツリン酸の生成増加に関与することを明らかにした。③各種トリテルペノイド(グリチルリチン、ソヤサポニン、オレアノール酸、ベツリン酸)の生合成に関わるオキシドスクアレン環化酵素およびシトクロムP450酸化酵素(CYP88D6、CYP72A154、CYP93E3、CYP72A566、CYP716A179)遺伝子のプロモーター領域の単離を行った。
すべて 2018
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Plant Cell Physiol
巻: 59(4) ページ: 778-791
10.1093/pcp/pcy046