本研究の目的は、漢方薬の原料となる生薬の品質をNMRを用いて評価する新たな手法を確立することである。 本年度は実施計画にある生薬のうち、最も漢方薬への使用頻度の高いカンゾウを選びNMRメタボロミスによりその種が判別できるかを検証した。カンゾウ三種(Glycyrrhiza glabra、G. uralensis、G. inflata)をそれぞれ入手し、メタノールによる加熱還流抽出、及び熱水抽出を行い、それぞれ対応するエキスを調製した。つぎにそれらのエキスをODS担体を充てんしたカラムに負荷し、水、含水メタノールおよびメタノールによる溶出を行い、それぞれ対応する溶出画分を得た。次にそれらの溶出画分の溶媒留去を行い、減圧乾燥させたのち、いずれも10mg/mLとなるようにdimethyl sulfoxide-d6に溶解し、各サンプルについて1H NMRスペクトルを測定した。得られたスペクトルはAlice2 for metabolome(JEOL)に供し、バケット積分とそれに引き続き、主成分分析を実施した。 得られた主成分分析のスコアプロットを確認したところ、それぞれの種に応じて分類することができた。今回の検討から前処理の重要性を改めて確認することができた。 日本薬局方においては生薬であるカンゾウの基原植物としてGlycyrrhiza inflataは指定されていない。今回のNMRメタボロミクスの手法を用いることによって、G. inflataが誤って混入した場合でも、感度良くその混入を検出することができると思われる。
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