平成30年度は、節足動物および環形動物を基原とした生薬のDNA鑑定法について検討した。用いた生薬は白僵蚕(ビャッキョウサン)1例、桑ひょう蛸(ソウヒョウショウ)1例、虻虫(ボウチュウ)2例、しゃ虫(シャチュウ)1例、蝉体(センタイ)1例、水蛭(スイテツ)2例、地竜(ジリュウ)4例で、すべて日本の生薬メーカーまたは漢方薬局から、原型をとどめているものを入手した。DNA抽出は、平成29年度までに確立した動物生薬からのDNA抽出法(QIAamp DNA Mini KitにTE飽和フェノール処置を加えた方法)で実施した。抽出DNAについて16S rRNA、12S rRNAおよびCOI領域をPCR増幅させ、BigDye Terminator v1.1 Sequencing Kitにてシークエンスし、BLAST解析により相同性検索を行った。その結果、いずれのサンプルからもDNA抽出でき、我々が確立したDNA抽出法は、節足動物および環形動物由来の生薬にも適用できることが確認された。白僵蚕の16S rRNA領域では、数ヶ所で同じ塩基が連続したため解析できなかった。また、桑ひょう蛸、しゃ虫および蝉体の16S rRNA領域では、混合シークエンスとなり解析できなかった。地竜では、4例のいずれも12S rRNA領域では増幅しなかった。BLAST解析の結果、水蛭2例は、外観は類似しているが、互いに種が異なることが判明し、地竜4例も外観は類似しているが、2種類に分類できることが判明した。虻虫は、遺伝子領域ごとに解析結果が異なり、種までは特定できなかった。これらのことから、節足動物および環形動物由来の生薬も、分子生物学的手法による基原推定が可能であったが、それぞれの生薬に適した遺伝子領域を調べる必要があると考えられた。
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