研究課題/領域番号 |
16K08308
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
一柳 幸生 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (80218726)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | ステモナアルカロイド / VCD / DFT / 配座探索 |
研究実績の概要 |
中国産ビャクブコン(タマビャクブStemona tuberosaの根)のメタノール抽出エキスを分配操作して得られた粗アルカロイド画分を各種クロマトグラフィーにて分画した。一部の画分について高速液体クロマトグラフィーにより分離・精製を行い、新規構造を有するアルカロイド4種とともにN―オキシド誘導体の合成原料となる3級アルカロイド tuberostemonine および stemoninine を単離した。新規アルカロイドのうち1種は単結晶X線解析により構造決定を行い、3種についてはMS、IR、1次元および2次元NMRスペクトルの解析により構造決定した。そのうちの1種はイミニウム構造を持つ4級アルカロイドで、1種はスルホン酸基が骨格炭素原子に結合したユニークな構造を有していた。これらのアルカロイドは種々の医薬品の構造中に見出されるアゼピン骨格を母核としており、その構造は医薬シーズ探索における in vitro および in silico スクリーニングに用いられる質の高い化合物ライブラリー構築をするうえで重要な要素となる。 アゼピン骨格は7員環構造を有するため、高い配座自由度を持つ。このように自由度の高い環状化合物への振動円二色性(VCD)スペクトル法の適用性と限界を把握するため、配座探索と配座構造についてデータの蓄積が多い二環性ペプチド化合物RA-VIIについて密度汎関数理論(DFT)計算を試みた。得られた計算スペクトルをRA-VIIの重クロロホルム中の実測VCDスペクトルと比較したところ、よい一致を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度において新規アルカロイド4種を単離し、それらの構造決定(相対立体配置)を行うことで、化合物ライブラリーを拡充することができた。併せてN-オキシド化合物の原料となる既知3級アルカロイドtuberostemonineおよびstemoninineを単離することができた。また、これらのアルカロイドより配座自由度の高い18員環ペプチド化合物についてVCDスペクトル測定とDFT計算を実施することで、フレキシビリティの高い環状分子にもVCDスペクトル測定/DFT計算を用いた配座解析ー絶対配置決定法が適応可能であることを検証できた。
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今後の研究の推進方策 |
天然化合物ライブラリー拡充のため、Stemona tuberosa の粗アルカロイド画分よりアゼピン系アルカロイドの分離精製ならびに構造解析を継続する。これらのアゼピン系アルカロイドのなかには化学的安定性が低く、分離操作中もしくは精製後保存中に徐々に分解するものも少なくない。そこで、これらの化学的安定性の劣るアルカロイド類の効果的な精製条件を新たに確立する。また、本植物より得られるアゼピン系アルカロイドは構造の多様性に富み、新規性の高い化合物が種々得られているが、新たにアゼピン系アルカロイド資源として有用な同属植物試料の収集を検討する。 一方、N-オキシド誘導体を用いたVCDスペクトル測定/DFT計算によるアゼピン系アルカロイドの絶対構造決定法を確立するために、豊富に得られたアゼピン系アルカロイドを用いてN-オキシド化の条件検討を試み、そのVCDスペクトル測定とDFT計算を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「CONFLEXワークステーション一式」の購入予算として1,300,000円を計上していたが、値引きにより想定より7,240円安く購入することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
VCDスペクトル測定には、重水素化率が高く、かつ高純度の重水素化溶媒を種々使用しなくてはならない。これらの溶媒は高価なため、次年度使用額(7,240円)はその購入資金の一部に充てる予定である。
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