平成30年度は、ビャクブ科植物、タマビャクブ(Stemona tuberosa)の根のメタノール抽出エキスを分配操作して得られた各画分を種々のクロマトグラフィーにより分画して得たアルカロイド含有画分を、分取用高速液体クロマトグラフィー装置により分離・精製し、新規アルカロイド5種を単離した。このうち3種の化合物は、単結晶X線解析により相対立体構造を決定した。2種の化合物については、IRスぺクトル、MSスペクトル、および二次元NMRスペクトルの解析により、一部の相対配置を含む平面構造を決定した。これらのうち4種の化合物はアゼピン骨格を持つが、1種はアゼピン骨格が酸化開裂した構造であった。5種のアルカロイドはいずれも微量であったため、VCDスペクトルの測定はできなかった。3種の化合物についてアセチルコリンエステラーゼ阻害活性を評価したが、いずれもガランタミン(IC50 = 0.12 μg/mL)に比べて活性は弱かった(IC50 = 124 ~ >200 μg/mL)。また、昨年度VCD法により立体構造を決定することができなかった茜草根(Rubia cordifoliaの根)由来RA系ペプチド化合物(分子量950)について、誘導体化後単結晶X線解析を行うことにより、絶対配置を含めてその構造を決定することができた。 平成28年度~平成30年度を通じて、11種の新規ステモナアルカロイドを単離・構造決定した。また、比較的多量に得られる既知ステモナアルカロイドを用いてN-オキシド体を得る条件を見出し、アゼピン骨格の配座構造を固定できることを確認した。一方、VCDスペクトル法について、構造中の一部の立体配置が不明な中分子化合物の構造決定への応用を検討した。
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