研究課題/領域番号 |
16K08311
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
金田 典雄 名城大学, 薬学部, 教授 (00144139)
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研究分担者 |
村田 富保 名城大学, 薬学部, 准教授 (80285189)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 抗腫瘍活性 / イソフラボン / アポトーシス / 白血病細胞株 / 標的タンパク質 / 光親和性小分子固定化法 |
研究実績の概要 |
申請者らはこれまでにボリビアデイゴErythrina poeppigianaの樹皮からグリオキサラーゼI(GLO-I)阻害活性とヒト急性骨髄球性白血病細胞株HL-60に対する強力な細胞死誘導活性を有するイソフラボン化合物であるエリポエギンKを単離した。また、エリポエギンKには(S)体および(R)体の2つの光学異性体が存在し、(S)体のみ細胞死誘導活性のあることを示している。さらにこれまでの研究でエリポエギンKをラセミ体として化学合成し、分取型キラルカラムを用いて(S)-および(R)-エリポエギンKを分離することに成功している。 本研究では、上記の分取型キラルカラムを用いる光学異性体の分離法では、大量の化合物を調製するのに多額の費用と労力を要することから、不斉合成を行うこととした。イソフラボンであるゲニステインを出発材料として不斉触媒による合成と再結晶を繰り返した結果、グラム単位で光学純度96%以上の各光学異性体を得ることに成功した。次にこれらの光学異性体を用いて標的タンパク質の探索を行うため、アフィニティービーズ作成のための予備実験を行った。その結果、フェノール性水酸基をアルキル基で修飾するとHL-60に対する細胞死誘導活性が消滅してしまったことから、別の方法として光親和性小分子固定化法を試みることとした。この方法はリガンド分子のランダムな場所でアフィニティービーズと結合すると考えられる。現在、本法を用いてHL-60細胞抽出液中の標的タンパク質の探索を行っている。 今年度は化学合成によって大量の光学活性な化合物が得られたことから、標的タンパク質の探索に加え、アポトーシスの細胞内情報伝達機構や細胞周期における作用、がん細胞を移植したヌードマウスに対するin vivo 抗腫瘍活性について検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エリポエギンKの細胞内標的タンパク質の探索の予備実験において、当初予定していたフェノール性水酸基に修飾基(アルキル基)を導入するとエリポエギンKの生理活性(細胞死誘導活性)が失われてしまった。そのため別のリガンド固定化法の一つである光親和性小分子固定化法を用いることに研究計画を変更せざるを得なくなったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後、エリポエギンKのin vivo 抗腫瘍活性の確認と細胞内標的タンパク質の探索を最重要課題として実験を遂行する予定である。in vivo 抗腫瘍活性の確認では、培養細胞レベルで強い細胞死誘導活性を示すヒト胃がん細胞株GCIYをヌードマウスに移植し、担がんマウスを作成する。次いで(S)-エリポエギンKを腹腔内投与し、腫瘍細胞の増殖抑制効果の有無を確認する。 また標的タンパク質の探索実験においては、光親和性小分子固定化法を導入しHL-60細胞の細胞膜画分、細胞質画分、核画分を調製し、各画分中のタンパク質との結合性について明らかにする。この時、(R)-エリポエギンKをコントロールリガンドとして用いることにより、特異性を確保することができる。
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