研究課題/領域番号 |
16K08314
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
野路 征昭 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (80271534)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シトクロムP450 / サイコサポニン |
研究実績の概要 |
小ミシマサイコの主要薬用成分であるサイコサポニンは、2,3-オキシドスクアレンから合成されたβ-アミリンがシトクロムP450により酸化され、糖転移酵素による配糖体化が起こることで生合成されると考えられる。しかし、その生合成の分子機構の詳細は明らかになっていないため、サイコサポニン生合成に関わる酵素群の遺伝子、特にβ-アミリンからサイコゲニンを生合成する際に関わるシトクロムP450の単離及び機能解析を試みた。 β-アミリンのC-23位の水産化に関わると考えられるシトクロムP450を同定するために、次世代シークエンサーを用いて作成したミシマサイコの根、茎、葉のESTデータベースを検索した。オレアノール酸のC-23位を水酸化するタルウマゴヤシのMtCYP72A68v2と類似しているアミノ酸配列を持つ12種類のシトクロムP450候補が存在していたため、これらcDNAの単離を行った。今回これらのシトクロムP450のうち、ミシマサイコからR34510、R40275、R32577、R81567、R144574、R204224の6つの全長cDNAの単離に成功した。R81567は1557塩基、R32577は1533塩基、R144574は1617塩基、R204224は1557塩基のコード領域を持つことが確認できた。また次世代シークエンサーのデータを用いて、今回単離したシトクロムP450遺伝子のミシマサイコの各部位での発現を予想したところ、いずれも葉より根での発現が高いことが示唆された。これらcDNAを酵母で発現させ機能解析を行ったところ、R144574を発現させた酵母でβ-アミリンの水酸化体の生産が示唆された。現在、β-アミリンの水酸化体と思われる化合物の単離、構造決定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サイコサポニン生合成に関与すると考えられるβ-アミリンのC-23位を水酸化すると示唆されるシトクロムP450のcDNAの単離に成功した。今後、この遺伝子を発現させた酵母が生産する化合物を単離し、構造決定を行うことで機能を明らかにしなければならない。また、ミシマサイコのESTデータベースを検索した結果、β-アミリンのC-16β位の水酸化に関与するシトクロムP450の候補配列をいくつか得ることができたが、平成28年度中に計画していた16β位炭素の水酸化に関与するシトクロムP450の単離、機能解析には未だ成功していない。しかしながら糖転移酵素の候補遺伝子の単離に成功し、また、酵母での複数遺伝子の同時発現による植物由来成分の生産に成功していることから、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
β-アミリンのC-23位を水酸化すると示唆されるシトクロムP450については、今後、この遺伝子を発現させた酵母が生産する化合物を単離し、構造決定を行うことで機能を明らかにする。また、C-16β位の水酸化に関与するシトクロムP450の候補遺伝子を単離し、酵母を用いて機能解析を行う。糖転移酵素については、単離した遺伝子の機能解析に大腸菌を用いた発現系を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室にPCR装置がなかったため、購入を考えていた(低価格50万円以下のもの)が、他研究室から使用していない装置を譲り受けたため購入の必要がなくなったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
多数の候補遺伝子を単離し、塩基配列を決定後、酵母発現ベクターに組み込むために多くの手間と時間を費やすことになってしまったため、遺伝子のサブクローニングを従来の制限酵素での切断、精製、ライゲーションという方法から、新しいIn-fusion法へと変更し、時間の短縮を試みようと思う。そのための試薬等の購入に使用する。
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