ミシマサイコの主要薬用成分であるサイコサポニンは、2,3-オキシドスクアレンから合成されたβ-アミリンがシトクロムP450に より酸化され、糖転移酵素による配糖体化が起こることで生合成されると考えられる。しかし、その生合成の分子機構の詳細は明らか になっていないため、サイコサポニン生合成に関わる酵素群の遺伝子、特にβ-アミリンからサイコゲニンを生合成する際に関わるシ トクロムP450の単離及び機能解析を試みた。サイコサポニンの生合成にはβ-アミリンの16位、23位、28位の3カ所が水酸化される必要があり、これまでに当研究室において16α位、16β位、23位および28位の水酸化を触媒するシトクロムP450遺伝子を同定してきた。次に13位と28位間のエーテル結合形成に関与する酵素遺伝子が同定出来れば、ミシマサイコの主要なサポニンであるサイコサポニンAおよびDのアグリコン、サイコゲニンFおよびGの生合成に関わる全ての酸化酵素遺伝子が明らかとなる。そこでこれまでに同定できた酵素遺伝子のミシマサイコの根、茎、葉での遺伝子発現を解析したところ、その発現パターンの類似性が非常に高いことに気づいた。そこでK-means法を用いた遺伝子発現解析を行い、同様の発現パターンを示すシトクロムP450の候補遺伝子を選定した。分子系統樹や発現量の比較により、これらの候補のなかからCL4443を第一候補とし、cDNAを単離し、酵母を用いた機能解析を行なった。28位水酸化β-アミリンを基質とした解析から、CL4443は13位と28位間のエーテル結合形成を触媒するシトクロムP450であることが明らかとなった。これで主要なサイコサポニン生合成に関与するシトクロムP450は全て明らかとなり、今後は糖転移酵素の同定が必要となった。
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