高知県におけるホソバオケラの実用栽培の可能性を探るために、植物園内の圃場を用いた基礎的な栽培試験と高知県内の農家との共同による委託栽培試験を並 行して実施している。 本年度は基礎試験として、栽培試験中に腐敗した根茎について糸状菌、ウィルス等の感染によるものであるかどうかを調べるために病害診断を実施した。先ず糸状菌の分離培養と遺伝子解析を実施した結果、健全部からBimuria novae-zelandiとFusarium solaniが、また被害部からはFusarium solaniに加えてIlyonectria sp.が検出された。F. solaniは健全部と被害部の両方から検出されたことから、根茎に広く内生している菌であると推定される。一方、種の同定には至らなかったもののIlyonectria属の菌は各地の土壌に普遍的に存在している菌である。細菌としては、Klebsiella aeroquensなど9種の細菌を分離したが、いずれも植物組織内に内生する最近であり、病害性はない。ウィルスについては、感染実験を行ったが、接種葉に病徴の出現は観察できなかった。これらの結果から、ホソバオケラの栽培中に多発する根茎の腐敗は、細菌類やウィルスの感染によるものでなく。生理障害に起因するものであることが推定できた。 委託栽培試験については、これまで主として栽培試験を実施してきた高知県西部の圃場に加えて、高知県東部の北川村で2年間栽培した植物の根茎を収穫して収量調査を行った。西部の圃場と同様に生育障害が著しく、生産性はきわめて低かった。
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