研究課題/領域番号 |
16K08318
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
棚谷 綾 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (40361654)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 核内受容体 / アンドロゲン / プロゲステロン / アンタゴニスト / ビタミンD / セコステロイド |
研究実績の概要 |
本研究では、リガンド依存的に遺伝子発現の制御を担うステロイドホルモン受容体を標的として、その機能を特異的に制御する化合物の創製を行う。今年度は、以下の研究成果を得た。 (1)新規アンドロゲンアンタゴニストの創製:プロゲステロンアンタゴニスト活性を有するクマリン誘導体の研究の過程で、7位にN-メチルベンズアミド基をもつ化合物がプロゲステロン受容体には作用せず、アンドロゲン受容体アンタゴニスト活性を持つことを見いだしており、本化合物をリード化合物として構造展開した。その結果、高活性で選択的なアンドロゲンアンタゴニストをみいだした。また、合成したアミド誘導体の立体構造解析から、アンドロゲンアンタゴニスト活性には、cis型アミド結合による折れ曲がった構造が活性に重要であることが示唆された。 (2)新規ビタミンD受容体アゴニストの創製:ステロイド骨格のB環が開裂したセコステロイド構造を持つビタミンDもステロイドホルモンと同様の核内受容体を介した遺伝子転写制御を行う。本研究では、天然リガンドが持つセコステロイド構造を持たない誘導体の創製を行った。まず、プロゲステロンやアンドロゲン受容体リガンドの骨格として用いたクマリンをセコステロイド骨格のCD環の代替構造として用いた分子設計を行った。クマリンに活性型ビタミンDのA環および側鎖構造となる置換基を導入した化合物を数種合成したが、ビタミンD活性は認められなかった。次に、第二のビタミンD核内受容体リガンドとして同定されたリトコール酸の構造をもとに、新規非セコステロイド型誘導体の創製を行った。リトコール酸は、活性型ビタミンDと比べると、その活性は数1000分の1程度であるが、合成したリトコール酸誘導体の仲に、活性型ビタミンDと同程度の活性を有するものを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、多様な生理作用を有するステロイドホルモン受容体の機能を厳密に制御する新規モデュレーターを創製し、ステロイドホルモン受容体を標的とする医薬開発基盤を構築することを最終目的としている。特に、ステロイド骨格を代替する新規構造を基盤として、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)にも有効なアンドロゲンアンタゴニスト、新たな臨床応用を目指したプロゲステロンアンタゴニストの開発を目指し、その成果を関連する核内受容体の医薬化学研究に展開する。 これまで、本研究者は、プロゲステロン受容体のアンタゴニストとして作用し、その蛍光プローブとしての応用性も有する化合物を見いだしてきた。今回、プロゲステロン受容体研究の過程で、アンドロゲン受容体に作用する分子を見いだし、その構造展開を行うことにより、高活性でアンドロゲンに対する選択性の高い化合物の創製に成功した。また、受容体選択性とリガンド分子の立体構造に関する知見を得ており、本結果は、今後のリガンド分子設計に有用な情報となる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果をもとに、アンドロゲン、プロゲステロン、ビタミンDの高活性、高選択的なリガンド分子の創製を進める。アンドロゲン、プロゲステロンについては、アミドの立体構造に基づく分子形状の違いが受容体選択性に関わっていることが示唆されたので、系統的な化合物合成、立体構造解析、生物特性の解明を行う。ビタミンDについては、リトコール酸の骨格を持つ分子で、リトコール酸よりも数千倍、活性ビタミンよりも高活性な化合物を見いだしたので、本化合物をもとに、構造最適化、生物特性や体内動態の基礎データの収集などを進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の購入に関して、端数が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越金はごく少額であるため、次年度の物品費の一部として用いる予定である。
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