平成29年末時点で最も発現効率が良かった系で大量発現を行い、1 mgのガレクチン9-scFv精製蛋白を得る為に必要なバイオマスの蓄積を行った。動体試験はガレクチン9-scFvに赤外蛍光物質ラベルを行い、ライブイメージで行うのが効率良く、装置を有するオランダ国フローニンゲン大学のEdvin Bremer博士との共同研究で行う予定である。これまで生産性改善のために複数の大腸菌種、分子シャペロン等の共発現、プロモーターの強度の調整、培地組成の変更をテストしてきたが、本来の目的である in vivo 薬効試験を行えるだけの量(13 mg以上)をまかなえる生産性に到達することは出来なかった。ガレクチン9と融合させた一本鎖抗体は25 kDaであり比較的小さいタンパク質であるが、分子内でS-S結合の形成が必要なため細胞質内の還元的環境での発現には不向きである。一方でガレクチン9は細胞質内の発現系においてのみ十分な生産が得られる。多機能分子であるガレクチン9と一本鎖抗体の融合は、抗体をスイッチすれば別疾患にも応用できるため魅力的であったが、非常に生産性が低いことから医療への応用可能性は低いと考えられる。短いペプチドならばガレクチン9と融合しても生産性を保持できる可能性があると考え、ガレクチン9を組織特異的に送達し得るペプチドを検索した。特許出願を予定しているのでペプチドの内容は伏せるが、ホルモンとして働くペプチドで、ある種のガンに受容体が高発現する"ある"ペプチドに可能性を見出した。ガレクチン9とそのペプチドとの融合タンパク質は大腸菌の発現系で合成でき、発現量は本来のガレクチン9の1/3に達した。この融合タンパク質には将来の応用の可能性があると考えている。助成金申請を含めて今後の展開を計画しているところである。
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