研究課題
糖非発酵グラム陰性桿菌(NFGNR)のペプチド代謝に重要なジペプチド産生酵素群の構造生物学的研究を通じた創薬研究を進めている。1.各種DPPの発現、精製、結晶化について: 多剤耐性菌及び歯周病菌由来のDPP群7種の発現系及び精製条件を確立し、結晶化スクリーニングを進めている。結晶化スクリーニングの一部については、高エネルギー加速器研究機構の自動結晶化ロボットを使用することとIn situでの回折実験を併用することによって、複合体結晶の結晶化条件の最適化の短縮化を行った。2.インシリコスクリーニングによる化合物探索: 歯周病菌由来DPP11の立体構造と大阪大学の配布しているLigandBox(200万個の化合物データベース)を用いて、AutoDock Vinaによるインシリコスクリーニングを実施した。そのうち、計算上のBinding Affinityを参考にして13種類の化合物を選び、活性測定を実施した。そのうち、70%以上の阻害率を示すものが2種、90%以上の阻害率を示すものが1種と阻害化合物のシード化合物となりうる化合物を得ることができた。3.各種化合物との共結晶化と結晶構造解析: 歯周病菌由来ペプチド分解酵素及び類縁酵素の複合体結晶を用いて、大型放射光施設(SPring-8 BL41XU, BL44XU, PF BL17A, BL1A)にて80セット以上の回折強度データを収集した。上記インシリコスクリーニングで得られた化合物との共結晶からは1.44A分解能の回折強度データを収集した。多種の化合物やペプチドとDPP群との複合体の回折強度データ収集に成功し、阻害化合物の設計・最適化に向けた知見が得られつつある。
1: 当初の計画以上に進展している
各種DPPと化合物複合体について、多くの回折強度データと複合体構造が得られ化合物設計及び最適化を共同研究者と進めている。さらに、複合体構造に基づいて設計及び最適化した化合物の阻害活性評価を行い、当初の計画以上に進展している。一部の化合物については平成29年度に実施予定だった抗菌活性評価を実施した。
大阪大学生体超分子ビームライン、大阪大学蛋白質研究所共同研究員に採択され、結晶化及び放射光利用の支援を受けX線結晶構造解析を実施している。また、2017年度からは、高エネルギー加速器研究機構の共同利用実験課題に採択され、これらの制度を利用して、化合物との複合体の構造解析と構造最適化、阻害活性評価のサイクルを回して創薬研究を進める。一方、化合物複合体の結晶化スクリーニングとして活用していた高エネルギー加速器研究機構の自動結晶化ロボットの利用が創薬等支援技術基盤プラットフォームの終了に伴い一旦利用できなくなるため、後継プロジェクトである創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業への応募を行い、支援を受けられるようにする必要がある。
研究者の責務ではない事務処理遅延により、次年度使用額が生じているため。
実際には、全額使い切っているため次年度使用額の使用計画はたてられない。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 8件、 招待講演 3件) 備考 (2件)
日本結晶学会誌
巻: 58 ページ: 221-227
http://doi.org/10.5940/jcrsj.58.221
Photon Factory Highlights
巻: 2015 ページ: 56-57
https://www.nasa.gov/mission_pages/station/research/news/compelling_science_awards_2016/
http://iss.jaxa.jp/topics/2016/07/160715.html