研究課題/領域番号 |
16K08325
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
須原 義智 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (30297171)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ビタミンK / メナキノン / 神経分化 / ニューロン / 再生医療 / アルツハイマー病 / 分化誘導作用 |
研究実績の概要 |
本研究は再生医療で行われている幹細胞からニューロンへの分化を、従来の遺伝子導入によらず、低分子の「神経分化誘導物質」によって制御することを目指している。我々はすでにニューロン選択的に分化を誘導する物質としてビタミンKを見出しているため、この化学構造を基にして、作用発現に重要であると予想される置換基や、既知の神経分化誘導物質の部分構造を取り入れて強い分化誘導作用を有する誘導体を探索している。現在までにビタミンKのひとつであるメナキノン類の側鎖末端にベンゼン環を導入すると、マウス胎仔大脳由来の神経幹細胞をニューロンへの分化を選択的に誘導することを見出している。そこで今回はさらに分化誘導活性を高めるために、作用タンパク質との相互作用を期待して、メナキノン類の側鎖部分にベンゼン環とともにヘテロ原子を導入した誘導体を合成し、ニューロンへの分化誘導活性を測定した。その結果、パラ位にフッ素原子を導入したアニリン化合物を側鎖末端に結合させたメナキノン-2誘導体に強い分化誘導活性が見られ、かつコントロール群に比べて3倍以上のニューロンへの分化の選択性が見られた。現在は上記とは異なる手法により新たなビタミンKの誘導体合成を行っており、引き続き化合物ライブラリーを構築する予定である。一方で、これらビタミンK誘導体の作用発現に関係するタンパク質をpull-down法によって明らかにするためのリガンド合成や、細胞・組織内動態を明らかにするための蛍光標識体の合成も同時に行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標であった化合物ライブラリーの一部を作製することができた。今回はビタミンKの側鎖末端部に脂溶性の官能基として、置換基をもつベンゼン環とヘテロ原子を同時に導入することで、脳神経に対する作用の増強を狙うと同時に作用タンパク質との相互作用による分化誘導活性の向上を目指した。今回はビタミンK同族体のひとつであるメナキノン類をリード化合物として、上記の構造修飾を行うことにより、天然体より強い活性を持つ誘導体を数種類見出すことができた。一方、脳神経幹細胞からニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトへの分化誘導活性の測定方法として、これまでに行っていた免疫蛍光染色による観察に加えて、新たにPCR法による高感度な評価方法を開発した。さらに、in silicoでのQSAR解析により、化合物の分化誘導活性を予測できる手法を見出した。これらのことから、我々の研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今回までに得られた知見を基にして、ビタミンKをリード化合物とした誘導体の化合物ライブラリーを作製し、より強力な分化誘導活性をもつ化合物を見出す予定である。同時に、神経分化に関与する作用タンパク質を見出し、これまでに得られている高活性を示したビタミンK化合物を用いて、その作用メカニズムを明らかにしていく。作用メカニズムは、上記に示した得られた情報を基に、作用タンパク質により強力に作用する化合物をデザイン・合成する方策を計画している。 一方で、分化誘導活性の測定方法においては、これまでにマウス胎児大脳由来の初代培養細胞を用いていたが、株化細胞を用いた実験系も検討し、より簡便に活性評価ができる評価系も立ち上げたいと考えている。
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