研究課題/領域番号 |
16K08328
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
川原 浩一 新潟薬科大学, 薬学部, 准教授 (10347015)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / Am80 / Bexarotene / truncated GPNMB / 1型ミクログリア / 2型ミクログリア / モノクローナル抗体 / GFPノックインマウス |
研究実績の概要 |
ミクログリア亜種(1型と2型)の機能・分化を制御しうる化合物を見出し、アルツハイマー病の新規治療法につなげる研究を行っている。本年度に得られた知見は以下の通りである。2型ミクログリアの機能や分化を促進しうる化合物の一つとして、レチノイドに注目している。レチノイン酸受容体 (RAR) とレチノイドX受容体 (RXR) の同時活性化によるアルツハイマー病治療の早期実現を目指し、RXR作動薬として唯一臨床導入されている bexarotene (Bex) と、RAR作動薬・tamibarotene (Am80) との併用経口投与の治療効果を調べた。8.5月齢APP23マウスにvehicle, Bex (3 mg/kg/d), Am80 (0.5 mg/kg/d) + Bex (3 mg/kg/d) を19日間経口投与し、投与16日目から4日間モリス水迷路試験を行った。Vehicle投与APP23マウスは、その野生型同腹仔と比べ、記憶の形成過程に障害がみられたが、Am80/Bexを併用投与すると、それらの障害は有意に改善された。プローブ試験で評価される記憶保持力は、併用投与で有意に改善されなかった。Bex単独投与は、有意差はないものの、記憶形成過程の障害を改善させる傾向にあった。しかしながら、vehicle単独投与(APP23マウス)でも、個体間で記憶スコアに大きなバラツキがみられたため、個体数を増やすなど、さらなる検討が必要である。1型ミクログリアについては、1型ミクログリア特異的抗体9F5の樹立、9F5抗原分子 (truncated GPNMB) の同定、ならびにGpnmb-GFPノックインマウスの開発に関する論文を作成し、公表することができた (GLIA, 2016)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ミクログリア亜種(1型と2型)の機能・分化の分子基盤を解析し、それらを制御しうる化合物候補の同定、さらにはそれらをアルツハイマー病の新規治療法に展開することを目的としている。2型の研究については、トランスジェニックマウスの繁殖や水迷路試験のセットアップに時間を要したものの、Am80/Bexのin vivoでの評価を開始し、予備的知見を得ることが出来た。また上述した通り、ミクログリア亜種を峻別する分子ツール(特異的抗体、GFP標識マウス)を開発し、科学論文として発表することが出来た。以上より、おおむね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
APP23マウスは個体間でバラツキが大きいため、その要因を明らかにするとともに、薬物の評価では、信頼あるデータを取得するために継続して行動実験を行う。また、脳内Aβやリン酸化タウへの影響など生化学的解析も行い、薬物の評価を行う。1型ミクログリアが、アルツハイマー病発症に伴い、脳内のいつどこに分布しどのような機能をもつか、を調べるために、APP23マウスとGpnmb-GFPノックインマウスの交配を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
行動実験を中心に解析を進めたため、Aβ ELISAキットやリン酸化タウを認識する抗体をまだ購入していない。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の生化学試薬やgenotypingを行うための分子生物学試薬を購入する。
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