研究課題
本研究では、新規タモキシフェン誘導体であるRID-Fが、ヒト20Sプロテアソームへの非拮抗的な阻害剤として有効であることを示した。RID-Fは、サブマイクロモーラーレベルでプロテアソームの3種全ての酵素活性を阻害した。構造活性相関研究から、RID-F誘導体(RID-F-S*4)が、RID-Fと同様の阻害強度を示すプロテアソームを阻害する最小構造であることを明らかにした。しかし、RID-Fは、20Sプロテアソームの活性を阻害するが、26Sプロテアソームに対しては阻害効果が弱いという問題点があった。そこで、RID-Fと様々なペプチドを結合させた付加体の効果について論じた。7残基のアミノ酸を含むRID-Fのペプチド付加体が、26Sプロテアソームに対して阻害効果を大きく向上させることを示した。特に、RID-Fに8つのアルギニンペプチド(R8:細胞膜透過配列とも呼ばれる)を付加したものが、細胞内プロテアソーム活性を阻害し、薬剤耐性骨髄腫細胞株KMS-11の細胞死を誘導させた。また、疎水性ペプチドを付加したRID-F付加体は、26Sプロテアソームを阻害したが、細胞死は誘導せず細胞内への透過性が低いことが示唆された。そこで、R8ペプチドに以下に述べる2つの働きを推測した。(1)細胞内への付加体の迅速な移行が、薬剤の細胞内濃度を十分に増加させた。(2)26Sプロテアソームによる付加体の認識が、触媒チャンバーの中への薬剤取り込みを誘起させた。これらの推測の妥当性を検証した。特に注目すべき点として、ATPγS存在下において、R8を含むRID-F付加体は、ATP存在下よりもより強力に阻害した。これは、基質と同様な様式によって触媒チャンバー内への薬剤の効率的な進入を示唆している。この結果から、低分子量プロテアソーム阻害剤へのペプチド付加により、細胞レベルでの作用を増強できることを明らかにした。
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Analytical Sciences
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doi.org/10.2116/analsci.18P498
Biochemical Pharmacology
doi: 10.1016/j.bcp.2019.03.037.