1.遅延型ペプチドによるRNA干渉の遅延メカニズムを有機化学的な手法で明らかにすることを目的に研究を行った.前年度に,遅延型ペプチドにおけるヘリックスペプチドとRGDとの立体障害を緩和するために,ヘリックスペプチドとRGDのリンカー部の炭素数を1~2個伸ばしたペプチドを合成した.炭素数を1~2個伸ばしたペプチドにおいても蛍光ラベル化siRNAの細胞内デリバリー効果は認められたが,RNA干渉効果については元のペプチドの効果よりも弱いことが分かった.共焦点レーザー顕微鏡を用いて,炭素数を伸ばしたペプチドによる蛍光ラベル化siRNAの細胞内分布を観測したところ,エンドソーム内に局在していることが分かった.これらの結果から当初予想していたヘリックスペプチド‐RGDの細胞内還元によるエンドソーム膜の不安定化が,ヘリックスペプチドとRGDのリンカー部の炭素数を1~2個増加したペプチドを用いても起こっていない可能性があることが分かった. 2.速効型ペプチドのRNA干渉効果に対する構造活性相関研究を実施した.速効型ペプチドはヘリックスペプチドのC-末端にRGDペプチドを有し,塩基性残基であるリシンを5残基含む.このリシン残基の影響を検討する目的で,リシン残基を増加させたペプチドを合成した.元のペプチドよりリシン残基を2個増加させたペプチドは非常に弱いsiRNAの細胞内デリバリー効果を示したが,さらに4,6,8個とリシン残基を増加させたペプチドは全くsiRNAの細胞内デリバリー効果を示さなかった.またRNA干渉効果については,リシンを増加させたこれらのペプチドは,その効果を全く示さなかった.故に,速効型ペプチドの両親媒性ヘリックス構造における疎水性残基とリシン残基のバランスがsiRNAの細胞内デリバリー効果において重要であることが分かった.
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