研究実績の概要 |
プラスミン(Plm)は線溶系の主要な酵素であるが、血栓除去ばかりでなく、腫瘍の形成にも関わっており、多発性骨髄腫患者において凝固線溶系に異常がみられることが報告されている。今回我々は、劇症多発性骨髄腫モデルマウスを作製し、これにPlm 阻害剤を投与した。Plm 阻害剤はPlmを抑制するが、多発性骨髄腫の進展を抑えることができないことを示した【Salita Eiamboonsert, Yuko Tsuda, Beate Heissig et, al, Biochem. Biophys. Res. Commun. 2017, 488, 387-392】。 さらに、凝固線溶系因子は免疫系を過剰に活性化させることが示唆されてきた。マクロファージ活性化症候群(MAS)は、免疫の過剰な活性化により引き起こされるサイトカイン・ストームと多臓器で起こる機能障害が特徴であり、重篤な病状である。このような病状では凝固線溶系に異常がみられることは知られていたが、線溶系の主要酵素であるPlmの役割は不明であった。今回MASモデルマウスを作製し、このモデルではPlm活性が異常亢進しており、免疫系の過剰な活性化に凝固線溶系因子が関わっていることを示した。さらに、Plm阻害剤でPlmを抑制するとMASによる死亡率を低下できることを示した【Hiroshi Shimazu, Yuko Tsuda, Koichi Hattori, et. al. blood, 2017, 130, 59-72】。 最後に、ミクロプラスミン(microPlm、プラスミンの活性中心領域)と我々のPlm 阻害剤の共結晶構造を解析し、酵素-阻害剤の相互作用様式を明らかにすることができた。【Ruby H, P. Law, Yuko Tsuda, et. al. blood advances, 2017, 1, 766-711】。
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