研究実績の概要 |
昨年度,ミクロプラスミン(microPlm, プラスミンの活性中心領域)と我々所有のPlm 阻害剤YO-2 (IC50 = 0.53 microM)の共結晶構造を解析した結果, 酵素-阻害剤の相互作用様式が明らかになった.本年度は, これら情報とYO-2の構造をもとに, 以下の新規化合物を合成し、Plm阻害活性の評価を行った. 1) 環状Plm阻害剤のデザイン:カルボキシ末端のオクチル基はmicroPlm のS2’サブサイトと相互作用しておらず, 酵素との結合に寄与していないことが分かった. そこでこの部分を環状化してS’ポケットとの相互作用を増強することを試みた.不飽和結合を有する20員環化合物がもっとも強力にPlmを阻害した (1, IC50 = 3.68 microM). 20及び18員環状化合物(1, 2)は, 対応する鎖状化合物の約5倍強力にPlmを阻害した. 2) イミダゾール骨格を有する阻害剤のデザイン:S’サブサイトにおける相互作用を付加する目的で, オクチル残基の代わりにイミダゾール基(ベンゾイミダゾール型)を導入した. 合成した化合物中, 化合物3は最も強くPlmを阻害した (IC50 = 21.5 microM). 合成したすべての化合物は、測定溶媒に対してよく溶解し, 溶解性の改善には有用であった. 3) 阻害剤中のアミノ基を回避する試み:S1サブサイトとアミノ基の相互作用は重要であるが, アベイラビリティ改善の観点からは回避したほうが好ましい. アミノ基に替わる残基として①クロル基を有するニコチン酸, あるいは②二環性複素環を導入し, Plm阻害活性を検討した. これら化合物中, 二環性複素環構造を有する化合物4は, 弱いながらPlmを阻害した (IC50 = 27.6 microM).
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