研究実績の概要 |
本研究は、ジヒドロピリミジン(DP)誘導体のレチノイドとしての機能開発を行うものである。①4,4-二置換 2-チオキソ DP は大腸がん細胞 HT-29 に対して不活性であるが、白血病細胞 HL-60 に対して強い活性を示した。4,4-ジアルキル体においてアルキル鎖が伸長した誘導体は IC50 値が 50 nM であった。ジメチル体の IC50 値が 10 μM以上であることから、4位のアルキル鎖が活性に劇的に影響したことになる。2-オキソ体に比べて、2-チオキソ体の活性が高い。二種の腫瘍細胞に対してまったく活性が異なることから選択毒性を有している。②4,4-二置換 2-メチルチオ DP の HL-60 に対する分化誘導作用を CD11b をマーカーとして調べた。その結果、シクロヘキシル基を有するスピロ型の誘導体が特異的に分化誘導作用を有することを明らかにした。その作用は ATRA やタミバロテンと同程度であり、さらにスピロ型 DP が ATRA と同程度にアポトーシスを誘導していることも明らかにした。ATRA とは構造がまったく違う DP がレチノイドとして働くことは新しい知見である。HL-60 に対する IC50 値は 6.3 μMであり細胞毒性は高くないが、既存の医薬品に匹敵するリード化合物を見出すことができた。強力な細胞毒性を示した 4,4-二置換 2-チオキソ DP 群について同様の解析を進めており、医薬品を凌駕する活性化合物が見つかると期待される。③新規 DP 誘導体の合成法として、2-オキソ、チオキソ、アミノ 6-無置換体を合成する一般的手法を開発した。Stile反応により 2-アリール体に導くこともでき、2 位について一連の化合物群を合成できた。
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