研究課題
現在用いられている血管新生促進剤は、生体由来の血管内皮成長因子(VEGF)や繊維芽細胞成長因子(FGF)といった高分子糖タンパク質である。これらは糖尿病患者における慢性閉塞性動脈硬化症やバージャー病といった、血流不足のために生じる様々な症状の緩和・治癒に用いられるが、化学的あるいは生物学的に不安定であり、これらVEGFやFGFといった生体由来の増殖因子以外に促進剤がほとんど知られていないために、現在も臨床応用は極めて少ないままである。ところが近年、申請者らは新規に合成した核酸類縁体:2クロル炭素環オキセタノシンA (2Cl-C.OXT-A:通称COA-Cl(コアクロル))に強力な血管新生促進作用があることを明らかにした。COA-Clは、化学的に非常に安定で、そのプリン骨格の2位にクロル基、9位に2つのヒドロキシメチル基を持つ4員環が結合したユニークな構造をしており、低分子化合物(分子量284)としては唯一、血管新生促進作用を示す物質である。さらにこの点が注目されCOA-Clは、2010年に和光純薬工業(株)より新規血管新生促進剤として市販されている(コードNo.032-21543, 5mg, 60,000円, 細胞生物用)。本研究では、コアクロルの構造活性相関の一環として、シクロブタン環を例えばシクロプロパン環に変換したコアクロル類縁体を種々合成し、その血管新生促進活性を測定した。その結果、本家のコアクロルを上回る活性を示すシクロプロパン型コアクロルの創製に成功した。
2: おおむね順調に進展している
コアクロルの類縁体を合成し、本家のコアクロルと同等以上の血管新生促進活性を有するものを見い出す事が出来たため。今後、より高活性で且つ低毒性なコアクロル類縁体の創製を目指したい。
血管新生促進剤であるコアクロルは、プリン骨格の2位にクロル基、9位に2つのヒドロキシメチル基を持つ4員環が結合したユニークな構造をしている。今後は、プリン骨格に結合している官能基を適切に変換する事により、より高活性で低毒性なコアクロル類縁体を創製する予定である。
シクロプロパン型コアクロルを合成するのに用いた試薬が、安価で手に入ったため。
一般的に、合成したサンプルのNMRでの構造確認には、安価な重水素化溶媒であるクロロホルム-dが用いられる。しかしながら合成したコアクロル類縁体の多くがクロロホルム-dに溶けにくいため、高価な重水素化溶媒(メタノール-d6やジクロロメタン-d2等)を購入する。また、合成中間体等を精製するために必要なシリカゲル等の購入にも充てる。
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Chem. Pharm. Bull.
巻: 未定 ページ: 未定
Physiological reports
巻: 4(6) ページ: e12742