陽電子放射断層撮像(PET)は生命科学、病気診断、創薬研究などに極めて有効な分子イメージング技術である。この技術を広く活用するために、新たなトレーサー標識合成法の開発がますます重要になっている。今までほとんどのPETトレーサーは、脂肪鎖もしくは芳香族環上の置換基に[11C]メチル基、[11C]カルボニル基、又は[18F]フルオロ基を導入することで合成されたものである。多様なPETトレーサーを開発するために、環状化合物の環内炭素の11C標識法が強く望まれる。 本研究は、独自なPd(II)を介してボロン酸誘導体を前駆体とする[11C]シアン化反応を開発し、多彩な構造を持つ[cyano-11C]ニトリルの高速高効率合成を実現した。さらに、獲られた[cyano-11C]ニトリル化合物のニトリル基は、続き高速付加環化反応を経って、C-11を導入するヘテロ環の創製に応用した。1)[cyano-11C]ニトリルとトリメチルシリルアジド(TMSN)の[3+2]高速付加環化反応を経って、tetrazole環の環内炭素を11C標識するOne-pot手法を実現できた。様々官能基を持ちtetrazole環(15例)の効率合成を確認でき、機能性トレーサーとして、COX-2 inhibitor [11C]CC-33(celecoxib analog)の合成も実証できた。2)[cyano-11C]ニトリルとdicyandiamideの高速付加環化反応を経って、triazine環の環内炭素を11C標識するOne-pot手法も確立した。様々官能基を持ちtriazine環(8例)の効率合成を確認でき、機能性トレーサーをして、胃潰瘍治療剤Irsogladineの11C-標識合成も実証した。 本方法論は、今後のpyridineとimidazolineなど環状構造の環内を11C導入する研究にも参考できると思います。
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