研究課題
ヘパラナーゼとヘパラン硫酸のインフルエンザウイルス感染病態進行における役割について、上皮細胞自身による基底膜分解・ウイルス感染への関与、炎症時の免疫細胞による組織浸潤・基底膜分解への関与、炎症細胞から上皮細胞への刺激を介した上皮細胞の生存とマトリックス分解への関与、の3点から検討した。(1) 上皮細胞自身による基底膜分解・ウイルス感染へのヘパラン硫酸・ヘパラナーゼの関与:肺上皮細胞におけるヘパラン硫酸コアタンパク質としてシンデカン-1に着目し、crispr-Cas9の系を利用した遺伝子ノックアウト細胞のクローンで細胞表面のシンデカン-1の発現消失を確認した。この細胞のインフルエンザワクチンの感染効率は増大したことから、シンデカン-1以外の分子の関与、シンデカン-1分子の膜表面からのシェディングによる調節機構が重要と考えられたが、期間内に終了しなかった。(2) 炎症時の免疫細胞による組織浸潤・基底膜分解へのヘパラナーゼの関与:背部モデル炎症で炎症細胞の浸潤にヘパラナーゼが関与することを阻害剤を用いた薬理学的解析により示した。ヘパラナーゼ阻害物質の生体内での効果をより持続させるため、新しいヘパラナーゼ阻害物質の探索を進め、内在性糖鎖である高硫酸化コンドロイチン硫酸がヘパラン硫酸切断活性を始め、ヘパラナーゼの生物作用を阻害することを見出した。(3) 炎症細胞が蓄積・放出するヘパラナーゼの上皮細胞に対する効果:奏効分子であるヘパラナーゼを蓄積するマスト細胞において、一連のソーティング過程のうち取り込みに関与する分子としてシンデカン-4を同定した。一方、上皮細胞側ではこのヘパラナーゼとヘパラナーゼによって生じたヘパラン硫酸の断片が栄養欠乏時における上皮細胞の生存を維持すること、そのシグナルとしてNF-kappaB依存的シグナルが関与することを示唆した。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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