研究課題/領域番号 |
16K08343
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大神 信孝 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (80424919)
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研究分担者 |
矢嶋 伊知朗 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (80469022)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 難聴 / 内耳 / ラセン神経節 / マンガン |
研究実績の概要 |
【目的】世界で7億人の感音性難聴を誘発する環境因子として騒音が知られているが、食品・飲料水等に含まれる重金属摂取と聴力の関連について、難聴を誘発する曝露量の閾値、発症機序は殆ど分かっていない。マンガンは飲料水や食品に一般的に含まれる微量元素である事が知られている。我々がバングラデシュの飲用井戸水に含まれる重金属レベルを測定した所、約1.85 ppmのマンガンが検出される地域がある事が分かっている。一方、マンガンと聴覚系に関して、高用量の塩化マンガン(100 mg/kg)を皮下投与すると内耳にマンガンが蓄積する事が報告されている。しかしながら、飲用井戸水に含まれる程度の低用量のマンガン(3.3 mg/kg)が聴覚系に与える影響をin vivoで解析した報告は無い。本研究は、マンガンと聴覚障害の発症機序を解明し、予防法を開発する。 【方法】1ヶ月齢のC57BL6/J系統マウスを対象に、塩化マンガンを3.3 mg/kg/dayの用量で1ヶ月間飲水にて曝露した。曝露の前後で聴性脳幹反応を測定し聴力への影響を評価した。また、ニッスル染色、透過・走査電子顕微鏡解析を用いて内耳の病理解析を実施した。 【結果】マンガンの飲水曝露により4, 12, 20, 32 kHzの聴力が有意に低下した。曝露群の内耳コルチ器では、ラセン神経節の細胞密度が減少し、透過電子顕微鏡解析により神経変性像が観察され、リポフスチン顆粒が有意に増加する事が分かった。一方、有毛細胞の数や血管条の形態異常は観察されなかった。 【結論】マンガンを飲水曝露した野生型マウスは、内耳コルチ器のラセン神経節の神経変性を伴い難聴が誘発される事が分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
聴覚に影響する新規環境因子の曝露によりラセン神経節の変性が誘発されるなどの新知見が得られている為。
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今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策)今後は、ヒトを対象にマンガンと難聴の関連の解析を進めると共に、聴覚に影響する新規環境因子が誘発する聴覚障害を予防する方法を遺伝子改変マウスを用いて分子レベルで解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年7月、実験動物(マウス)の繁殖および聴覚解析を担当する専門的知識を有する研究協力者が急遽国内の民間企業に就職することが判明し、マウスを対象にした実験に参画できなくなった。同様の知識を持つ新たな人材を確保す必要が生じたが、確保までに4ヶ月の期間を要した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年7月までにマウスを対象にした曝露実験を完了し、新規環境因子が誘発する聴覚障害の機序解析に着手する。
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