研究課題
Staphylococcal superantigen like (SSL)はスーパー抗原と類似の立体構造を持つ黄色ブドウ球菌の毒素ファミリーである.最終年度である本年度はSSLファミリー及び他の黄色ブドウ球菌毒素より免疫細胞の活性化や免疫応答の増強を引き起こす毒素の探索を行った.その結果,本菌の代表的な溶血毒素であるαヘモリジンが単独ではマスト細胞に対し毒性を示さず,マスト細胞の活性化を引き起こさないが,イオノフォアやFcε受容体クロスリンクによる脱顆粒を増強することを見出した.またSSLの一つSSL12が単独でマスト細胞の脱顆粒,サイトカイン産生を誘導すること,SSL12をマウスに投与することで血管透過性の亢進を引き起こすことを見出した.これらの結果は黄色ブドウ球菌の産生するこれらの毒素がマスト細胞を刺激,応答増強することでアトピー性皮膚炎など免疫アレルギー疾患の発症・増悪を引き起こしている可能性を示唆するものである.また最終年度では私たちが以前見出したSSL10の標的分子であるIgGへの結合における責任領域の特定を行った.各種SSL10のドメインスワップ体を作成し,これらとヒトIgG結合性をELISAを応用した結合アッセイで評価することにより,結合部位の絞り込みを行い,SSL10の30アミノ酸程度の配列がSSL10-IgG相互作用に関与していることを見出した.この領域は以前同定したSSL10-プロトロンビンの結合を担う領域と同一であった.今回同定したアミノ酸配列は,SSL10の機能阻害を作用点とした医薬品開発に寄与すると考えている.
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (12件)
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 508 ページ: 263~269
10.1016/j.bbrc.2018.11.113
巻: 511 ページ: 350~355
10.1016/j.bbrc.2019.02.052
Biological and Pharmaceutical Bulletin
巻: 41 ページ: 877~884
10.1248/bpb.b17-00982
巻: 497 ページ: 713~718
10.1016/j.bbrc.2018.02.138
Microbiology and Immunology
巻: 62 ページ: 168-175
BPB reports
巻: 1 ページ: 35-39