研究課題
結核菌は、宿主細胞に対して生菌特異的に細胞傷害活性を持つことを見出している (Takii, et al., J Interferon Cytokine Res. 2001)。さらに、感染した宿主細胞の培養液の濾過にも細胞傷害活性が認められることから、培養上清に細胞傷害活性因子の存在が示唆された。 昨年度までに、M. tuberculosis H37Rv感染ヒト肺由来線維芽細胞株MRC-5細胞の培養中に含まれている因子の精製と推定を試みた。感染した細胞の培養液を0.22μmのフィルターでろ過し、菌体の混入を除いた後、ODS(C-18)カラム(TOSOH TSKgel Octadecyl-2PW)にてアセトニトリル0-75%の勾配で1分毎に分画し、各画分をMRC-5の細胞傷害活性を指標に活性画分の中でタンパク性因子をMSライブラリーにより推定した。LC-MS/MSによるマスコット解析の結果、結核菌感染宿主細胞からは結核菌に存在する複数のトランスポーターから排出される基質成分が含まれていた。本年度は、上記の基質成分を分泌するトランポーターの細胞傷害活性への関与を検討するために、トランスポーター欠損株の作成を試みた。結核菌での欠損株作成は6~8ヶ月を要するために現在作成中であり、次年度も引き続き行う。一方、アポトーシスとネクローシス以外の細胞死の形態として、パイロトーシスという現象が他の細菌感染症においてマクロファージ等の細胞で観察されている。結核菌による線維芽細胞や上皮細胞に対する細胞傷害活性は、宿主細胞にパイロトーシスを起こす可能性を検証した。MRC-5細胞にM. tuberculosis H37Rv感染MRC-5細胞から炎症性サイトカインの産生が認められることからパイロトーシスを起こしていることが示唆された。
4: 遅れている
結核菌は遅育菌であり遺伝子欠損株の作製に必要な時間として8ヶ月程度の時間を要する。そのため、変異体を用いた解析が遅れている。
トランスポーターを欠失した変異体の作成を進め、細胞傷害活性の関与について検証を行う。パイロトーシスの形態的な特徴について、結核菌感染MRC-5細胞の形態を電子顕微鏡で観察する。また、パイロトーシスの特徴の1つである炎症性サイトカイン産生機構を解析するために核内転写因子NF-kBの活性化を調べる。
申請者の所属変更に伴い、業務の多忙のため当初の研究計画を期間内に実施、完了することが出来ないため期間の延長した。現在までに作成、もしくは作成中の各遺伝子変異体を用いて細胞傷害活性経路の解析に使用する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件)
PLOS ONE
巻: 14 ページ: e0212798
10.1371/journal.pone.0212798
Biological and Pharmaceutical Bulletin
巻: 41(6) ページ: 877-884
10.1248/bpb.b17-00982
感染症学雑誌
巻: 92(5) ページ: 705-709