研究課題
結核菌強毒株Mycobacterium tuberculosis H37Rvと種々のヒト由来細胞株を共培養すると生菌特異的に宿主細胞死が誘導される株(A549;肺上皮細胞、MRC-5;肺線維芽細胞)があることを見出している(J Interferon Cytokine Res., 2001)。この細胞死は生菌特的であることから、結核菌の病原性との関連が示唆された。感染した宿主細胞の培養液の濾過にも細胞傷害活性が認められることから、培養上清に細胞傷害活性因子の存在が示唆され、昨年度までに、結核菌が感染したMRC-5細胞の培養中の活性因子の精製と推定を試みた。感染細胞の培養液を0.22μmのフィルターでろ過し、菌体の混入を除いた後、各種カラムを用いて活性画分の精製を進め、活性画分の中でタンパク性因子をMSライブラリーにより推定した結果、結核菌感染宿主細胞からは結核菌に存在するⅦ型分泌装置から排出される基質成分が含まれていた。上記の基質成分を分泌するトランポーターの細胞傷害活性への関与を検討するために、トランスポーター欠損株の作成を試みた。本年度は結核菌の病原性や免疫調節に関係することが示唆されているPE/PPEファミリーを分泌するⅦ型分泌装置の1つであるESX-5を欠損した作製を進めBCG株で欠損株を作製した。一方、アポトーシスとネクローシス以外の細胞死の形態であるパイロトーシスが、他の細菌感染症において報告されている。パイロトーシスの特徴はcaspase-1依存的な細胞死と細胞死に伴う炎症性サイトカイン産生である。結核菌が感染した線維芽細胞株死はcaspase-1の阻害剤により阻害され、細胞死と並行して炎症性サイトカインのIL-6, IL-8の産生が誘導されていた。これらのことから、結核菌感染により肺線維芽細胞株でパイロトーシスが誘導されることが示唆された。
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