研究課題/領域番号 |
16K08347
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研究機関 | 北海道薬科大学 |
研究代表者 |
前田 伸司 北海道薬科大学, 薬学部, 教授 (50250212)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 抗酸菌 / 一塩基多型 / 変異遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
M株は、北京型modernタイプの結核菌で、沖縄県、神戸市、大阪市、東京都、神奈川県等で広まっていることが知られている。他の地域における状況は、型別調査等が行われていないので明確ではないが、集団感染を起こした菌として、菌の型別調査依頼があることから日本全国に広まっているものと推定される。このようにM株は、他の結核菌と比べて感染性が高い可能性があることから注目して解析を行っている。次世代シークエンサー(NGS)分析によって、M株とH37Rv株との塩基配列の比較で一塩基多型(SNP)が存在することがわかり、その中に非同義置換が生じている遺伝子が43種類あることがわかっている。本研究では、それら遺伝子(H37Rv由来の野生型とM株由来の変異型)を抗酸菌で過剰発現させることで、増殖速度や菌の形態が異なるなど表現型変化の有無を調べた。43種類の遺伝子の内、2種類は結核菌で多型性が非常に高く機能不明なPE、PPE遺伝子なので除き、41種類について検討を進めている。 6種類の遺伝子の野生型、変異型発現プラスミドを構築し、実際にMycobacterium smegmatis及びMycobacterium bovis BCGで発現させ表現型に違いがあることを確認している。他の遺伝子に関しても10種類について、野生型のプラスミドを構築した。このプラスミドを元に、現在変異型プラスミドを構築しているところである。 他の研究や遺伝子相同性解析から酵素・タンパク質としての機能が推定されているものだけでなく、機能がわからない(Rv番号だけが付けられている)ものについても発現プラスミドを構築している。研究では、野生型と変異型タンパク質を過剰発現させて表現型の違いを比較する必要があるため、同時期に両方の株を準備する必要があり、計画より研究進行が遅れている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概要に記載した通り、遺伝子発現用プラスミドの調製に手間取っている。野生型株は、M. bovis BCGのゲノムDNAを鋳型にしたPCR法でクローニングできるが、変異型は得られた野生型のプラスミドを元に、サイトダイレクトミュータジェネシス法で変異体を作成している。そのため、手間と時間がかかり実験が計画より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
変異体作成のための時間短縮のために、遺伝子合成や新しいPrimeSTAR Mutagenesis Basal Kitなどを利用することでプラスミドの構築を進める。そして、遺伝子産物の過剰発現実験により、非同義置換SNPの有無で機能が異なる遺伝子を特定し、感染性や病原性に関連した酵素などを明らかにする。そのためにも候補遺伝子の迅速なスクリーニングが必須である。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況の項目に記載した通り、当初の計画より遅れている。そのため、今年度に購入予定であった消耗品を次年度に繰り越す措置をとった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、計画より遅れている分を取り戻すために本研究に集中的に取り組み、キット等を利用して効率的に変異型プラスミドの構築を行う。また、新規SNP部位同定のためのNGSの委託解析を予定通り行う計画である。
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