研究課題
ヒト全唾液(WS)由来粘膜免疫エキソソーム(Exo)の表面分子として同定されたLPSおよび分泌型IgA(sIgA)のマクロファージ(Mφ)への影響を検討した。Exoは表面分子を除去するとMφからの一酸化窒素(NO)産生が増強される。そこで、マウスMφ細胞株RAW264.7細胞にExoとともにLPSまたはsIgAを共添加したが、NO産生への影響は認められなかった。最近、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)がLPSと協調してトール様受容体4を介したNO産生を増強することが報告された。ExoにはII型膜タンパク質としてのDPP IVが豊富に存在しているが、表面分子除去後はDPP IV活性が上昇した。このことはExoを覆う表面分子が除去され、DPP IVの活性中心が露出した可能性が考えられた。DPP IVのMφ活性化への関与を確かめるために、RAW264.7細胞にLPSと組換え型DPP IVを共添加すると、DPP IV濃度依存的にNO産生が増強された。またExoによるNO産生はDPP IV阻害剤処理により、抑制された。Exoの体内動態については消化管内条件でのタンパク質構成成分の変化を検討した。胃内条件としてペプシン、腸内条件としてパンクレアチン(膵液酵素混合物)処理を行った。Exo表面のmucin 5BおよびCD9分子は消化されたが、DPP IVは消化されず活性は維持され、膜構造にも変化は認められなかった。腸内の界面活性剤としてコール酸ナトリウム処理を行ったところ、濃度依存的に膜構造の可溶化が起きたが、腸内の生理的濃度では形態は維持され、DPP IV活性も影響を受けなかった。以上のことから、唾液由来Exoは比較的安定に消化管内に到達する可能性があり、消化酵素により表面分子が消化されることにより、DPP IVが露出して消化管内でMφを活性化する機構の存在が考えられた。
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Biochim Biophys Acta Mol Cell Res.
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http://pharm.thu.ac.jp/research/unit/makukinou.html