研究課題/領域番号 |
16K08362
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
齊藤 恭子 国立感染症研究所, 細胞化学部, 主任研究官 (70235034)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 黄熱ウイルス / コレステロール / ゲノム複製 / フラビウイルス / 脂質 |
研究実績の概要 |
代表者らは、宿主コレステロール生合成の低下が、C型肝炎ウイルス(HCV)の産生を著しく低下させることを見出し、HCV産生に不可欠なコレステロールプールの存在を示唆した。この成果を踏まえて本研究では、(1)HCVがコレステロールを複製に利用する仕組みと複製における当該脂質の機能について手がかりを得ること、(2)特異的抗ウイルス薬のないHCV近縁のフラビウイルスも解析対象に加え、その感染におけるコレステロール等脂質の重要性を明らかにすることを目的としている。 フラビウイルスの一種、黄熱ウイルス(YFV)感染による黄熱病は、重篤な疾患であり、予防ワクチンはあるものの、特異的治療薬は存在しない。代表者は昨年度までにYFVワクチン株(YF17D)のサブゲノミックレプリコンを作製しており、これを安定的に持続発現するVero細胞(レプリコン細胞)を樹立している。レプリコン細胞ではYF17D株の複製装置によってレポータータンパク質が発現する。昨年度までにコレステロール生合成経路のある阻害剤が用量依存的にレプリコンによるレポーター発現を阻害することを見出した。今年度はこの阻害剤により、レポーター活性に相関してレプリコンRNAレベルが低下していることが確認された。また予備的な検討で、この阻害剤がYFV感染系においても抑制効果を持つことを見出した。その他のコレステロール代謝関連阻害剤については細胞増殖に影響のない濃度を定め、YFV複製に対する阻害効果を確認中である。今後は薬剤による阻害効果がコレステロールの低下によるものかどうかを検証し、YFV複製におけるコレステロール生合成の重要性についてさらに詳細な解析を進める予定である。またヒト肝がん由来Huh7.5.1-8細胞が高いフラビウイルス産生能を示すことを見出したので、同細胞を用いて他のフラビウイルスの複製に対する阻害剤の効果を調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要欄に記載した(1)のテーマについては、コレステロール輸送蛋白質に焦点を当てた解析が予定通り進行できなかった。また(2)のテーマについては、おおむね予定通りである。以上のことから、H30年度の進捗状況はやや遅れていると総合的に判断した。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝学的手法を用いて、コレステロールを輸送すると考えられる膜貫通型蛋白ファミリーのフラビウイルス感染への関与について調べる。また、YFV NSタンパク質に対する抗体を作製して複製複合体の可視化を検討する。可視化できたならば、レプリコンとYF17D株感染系を用いて複製複合体に対する阻害剤の影響を調べ、YFV感染におけるコレステロール等脂質の関与を詳細に解析する。フラビウイルス産生能の高いHuh7.5.1-8細胞を用いてYFVとそれ以外のフラビウイルスに対するコレステロール合成阻害剤の影響も調べ、フラビウイルス複製におけるコレステロールの重要性を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの進捗状況欄に記載した通り、進行がやや遅れているのもあり、物品費の使用が予定よりも少なかった。その結果、今年度使用額は予定額に満たず、残額が生じた。 令和元年度は予定通りに研究を進めて成果発表を行い、研究費の適正使用に努める。
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