研究課題/領域番号 |
16K08365
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
赤沼 伸乙 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (30467089)
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研究分担者 |
細谷 健一 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (70301033)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 血液脳関門 / プロスタグランジン / PGE2 / てんかん / L-グルタミン酸 / 脳毛細血管 |
研究実績の概要 |
本研究は、てんかん時における血液脳関門(BBB)プロスタグランジン(PG)輸送機能減弱の分子要因解明を目的としている。 てんかん時においては、脳細胞間隙中L-グルタミン酸の濃度上昇に起因する、過剰炎症反応が生じることが知られている。平成28年度において確立した単離脳血管輸送解析法にて、PG輸送担体である有機アニオン輸送担体(OAT3及びMRP4)を介したモデル基質cyclic AMPの蛍光標識体(Fluo-cAMP)のlumenへの移行はOAT3及びMRP4の介在輸送を反映することを見出している。本輸送解析を、てんかん時に過剰放出されるL-グルタミン酸の処理と炎症惹起模倣の条件下にて実施した。ラット単離脳血管lumen側へのFluo-cAMP移行は、L-グルタミン酸処理によって減弱し、炎症惹起物質リポ多糖処理条件下において変化しなかった。従って、in vivoにおいて観察されたてんかん模倣条件下におけるBBBを介したPG排出輸送減弱は、脳内炎症反応惹起ではなく、細胞間隙中L-グルタミン酸濃度上昇に起因することが示唆された。また、このFluo-cAMP移行は、L-グルタミン酸受容体の一つN-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)のアゴニスト処理によっても減弱した。NMDAR受容体が活性化されることによって、細胞内カルシウムイオン濃度が上昇する。L-グルタミン酸に加え細胞内カルシウムイオンをキレートする試薬を同時処理した結果、ラット単離脳血管lumen側へのFluo-cAMP移行の減弱は観察されなかった。以上の結果から、BBBにおけるOAT3及びMRP4機能は、NMDAR受容体介在シグナル伝達によって調節され、それがてんかん時におけるPG排出輸送低下の要因となり得ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に評価法が確立した、ex vivoラット単離脳血管輸送解析を用いて、けいれん発作・てんかん発症・進行に関係する経路のうちで、L-グルタミン酸介在経路が関与することが決定付けられた。この知見を基とし、脳毛細血管に存在するOAT3/MRP4の機能減弱に関係するBBBシグナル系を決定付ける方策である。それに並行し、血管における上記分子のラット脳毛細血管発現量変動評価についても予備的検討を進めており、mRNA発現量定量については問題無く実施可能であることが明らかとなり、平成30年度における輸送担体分子の発現レベル変動解析について、計画の見通しが立った。以上のように、in vitro/ex vivo解析について、研究実施計画は順調に進行している。 In vivoてんかんモデル動物については、動物作出を外来的薬物投与法にて作出と評価を試みている段階である。少し計画に遅れが生じているが、平成30年度前半には作出条件を決定し、BBB介在輸送解析とex vivo輸送解析にて関与が見出されたシグナルのモジュレーターを用いた解析に移る見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において後半に計画している、「BBBにおけるPGE2排出機能減弱の調節による脳内PGE2レベル正常化」を実施する上で、最適なNMDAR介在シグナルカスケード中におけるターゲット決定を、平成30年度前半に実施する予定である。具体的には、NMDAR活性化によって誘発される細胞内リン酸化系(プロテインキナーゼ・カルモジュリンキナーゼなど)の作動薬を処理、及びその阻害剤をL-グルタミン酸処理時に共存、の2種類について条件を設定し、Fluo-cAMP輸送減弱に関与するリン酸化系を決定付ける。 てんかんモデル動物を用いたin vivo解析について、前述のように申請者は作出条件について検討を進めている。NMDAR受容体と、上記シグナル伝達系の中で最適と判断されるターゲットが見出された場合は、その標的分子に対する阻害剤を本モデルに対し、内因的PGの脳内濃度変動への影響を解析する。さらに、BBBを介したPG排出輸送機能をbrain efflux index法にて、PG輸送担体mRNA発現量は定量的real-time RT-PCR法にて評価することで、内因的PG脳内濃度変化へBBBにおけるPG排出輸送機能分子メカニズム変動が関与することを実証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に業者にて開催されたキャンペーン期間中に必要試薬・消耗品を購入した際に、割安分の金額として1961円が残高として残された。この使用額については、平成30年度の試薬・消耗品を購入するための物品費として利用する計画である。
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