研究課題/領域番号 |
16K08368
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
大森 栄 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 教授 (70169069)
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研究分担者 |
山折 大 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 准教授 (40360218)
吉成 浩一 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (60343399)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヒト胎児肝細胞 / 糖質コルチコイド / SULT1E1 / CYP3A7 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
前年度の解析において、SULT1E1およびCYP3A7のデキサメタゾン(DEX)に対する応答性の差異は、SULT1E1およびCYP3A7遺伝子のエピジェネティックな機構によって制御されている可能性が示唆された。そこで、DNAメチル化の解除がSULT1E1およびCYP3A7遺伝子のDEX応答性に及ぼす影響について検討した。胎齢13週、14.4週、16週、18.3週のヒト胎児肝(HFL)細胞にDNA脱メチル化剤5-アザ-2′-デオキシシチジン(AdC)を96時間前処理した後、DEXを24時間処理した結果、SULT1E1遺伝子のDEX応答性はAdCにより消失した。一方、CYP3A7遺伝子のDEX応答性は胎齢13週のHFL細胞においてのみAdCによって増強された。このように、SULT1E1遺伝子もCYP3A7遺伝子も、DNAのメチル化では胎齢によるDEX応答性の差異を説明できなかった。 次に、クロマチンの構造変化がSULT1E1およびCYP3A7遺伝子のDEX応答性に及ぼす影響について検討した。各HFL細胞にヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるバルプロ酸またはトリコスタチンAの存在下でDEXを24時間処理した結果、SULT1E1遺伝子のDEX応答性はクロマチン凝縮により制御を受けている可能性が示唆された。一方、CYP3A7遺伝子のDEX応答性はクロマチン凝縮以外の機序により制御を受けている可能性が考えられた。しかし、SULT1E1遺伝子もCYP3A7遺伝子も、クロマチンの構造変化では胎齢によるDEX応答性の差異を説明できなかった。以上のことから、SULT1E1およびCYP3A7のDEX応答性の差異はエピジェネティクス以外の機序によって制御されている可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、HFL細胞におけるSULT1E1およびCYP3A7のDEX応答性に対するDNAメチル化およびクロマチン構造変化の影響を解析し、両遺伝子が異なる機構によってエピジェネティックな制御を受けていることを明らかにした。その一方で、両遺伝子発現の胎齢によるDEX応答性の差異はエピジェネティックな機構では説明できなかったことから、次年度の計画通り、SULT1E1およびCYP3A7遺伝子のエピジェネティクス以外の発現制御機構について解析を進めていくこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、SULT1E1およびCYP3A7遺伝子の胎齢によるDEX応答性の差異に関わるエピジェネティクス以外の発現調節因子について探索する。DEX処理した各HFL細胞を用いて、DNAマイクロアレイによる発現解析を行う。DEX応答性と相関する候補遺伝子を抽出し、その発現解析を行う。また、グルココルチコイド受容体や候補遺伝子の強制発現およびノックダウンにより、DEXによる候補遺伝子またはSULT1E1およびCYP3A7の発現変動の有無を明らかにする予定である。
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