研究課題
バイオ医薬品は低分子薬を補う次世代の医薬品として世界中から注目されているものの、ペプチド、核酸、抗体などはその物性的特徴(高分子、親水性等)から生体膜透過性に乏しく、ほとんどが侵襲的な注射による投与を余儀なくされており、経口投与を含めた非侵襲性投与法の開発は立ち後れているのが現状である。本研究では、これまでに見出したウエルシュ菌下痢毒素の受容体結合領域(C-CPE)によるバイオ医薬品をも経粘膜吸収促進可能な上皮バリア制御活性を、実用性に優れた低分子化合物により実現するため、独自に構築したclaudin-4 binder検出系を利用し、高い上皮バリア機能制御活性を示す低分子claudin-4 binderの取得を目指す。低分子claudin-4 binderを取得するため、既に構築しているTime-Resolved Fluorescence Resonance Energy Transfer (TR-FRET) 法を応用したclaudin-4 binder検出系をハイスループットスクリーニング(HTS)に適した実験系へと再構築した。再構築したclaudin-4 binderスクリーニング系を利用し、約3万の化合物ライブラリーよりclaudin-4 binderのスクリーニングを実施し、その結果として65種のヒット化合物を得ることができた。続いて、claudin-4への直接的な結合を確認するため、Biacoreによる結合解析を行った結果、27種類の化合物においてclaudin-4への結合性が観察された。以上、本年度は、claudin-4 binderのスクリーニングを中心に研究を進め、ほぼ終了することができた。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、低分子claudin-4 binderの取得を目標とし、TR-FRET法によるclaudin-4 binder検出系をHTSに適応可能なスクリーニング系へと再構築し、作製したスクリーニング系を利用して約3万の化合物ライブラリーから27種類の新たな低分子claudin-4 binderの取得に成功したため。
本年度は目標である低分子claudin-4 binderを取得することができたため、当初の計画に沿って、今後は得られたclaudin-4 binderの上皮タイトジャンクションバリア制御活性の解析を進める予定である。特に、目標とするC-CPEに匹敵する上皮バリア機能制御活性を示す化合物の取得を目指す。
初年度は、当初の想定を越えてスクリーニング系の構築およびスクリーニングが無駄なく行えたため経費を節約することができた。
次年度には、取得した化合物を用いた解析実験(細胞培養、バリア制御活性解析、動物実験など)に助成金を使用する予定である。
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Cellular Physiology and Biochemistry
巻: - ページ: -
Pharmacology Research & Perspectives
巻: 4(5) ページ: e00266
Biochemical and Biophysical Research Communications
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10.1016/j.bbrc.2016.06.025.