研究実績の概要 |
食物依存性運動誘発アナフィラキシー (FDEIA) は、特定の食物摂取後の運動負荷やアスピリンの服用によりアレルギー症状が誘発される疾患であり、その要因として運動負荷やNSAIDsの負荷が抗原の吸収を増加させることが知られている。しかし、運動負荷による抗原タンパク質の消化管吸収亢進の機構や抗原感作に対する運動負荷やNSAIDsなどの薬剤服用の影響およびその機構については不明である。本研究では、運動負荷および薬剤 (NSAIDs, 抗菌薬, 整腸剤) に着目して、食物抗原タンパク質の吸収と感作との関係を明らかにするとともに、感作を助長する要因を分子・細胞レベルで明らかにすることを目的とした。 これまでの検討で、我々はNSAIDsであるアスピリンの負荷により卵白アルブミン (OVA) や小麦グリアジンなどの食物抗原の吸収が亢進する知見を得ている。また、アスピリンの負荷はOVAの経口感作を増強する知見を得ている。この要因の一つとしてNSAIDsによるCOX-1の阻害が消化管上皮に障害をもたらし、食物抗原の吸収と感作を助長させることが予想された。ラットにアスピリンを連続経口負荷した際の消化管像を組織学的に解析した結果、アスピリンの負荷によりびらんや潰瘍を形成している組織像は認められなかったが、胃と十二指腸でコントロール群と比べて、絨毛組織の未分化像が確認された。このことから、アスピリンの負荷により消化管障害が惹起されていることが確認できた。さらに、アスピリンと同様にCOX-1を阻害するジクロフェナクを負荷するとOVAの感作は増強したものの、COX-2選択的阻害剤であるメロキシカムを負荷した群では感作の増強が認められなかった。このことから、NSAIDsによる抗原感作の増強にCOX-1阻害作用が一部関与している可能性が考えられた。この結果については、さらに精査する予定である。
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