現在、プロドラッグの開発において生体内の主要な変換酵素であるカルボキシルエステラーゼ (CES)、 ブチリルコリンエステラーゼ (BuChE) 、アリルアセトアミドでアセチラーゼ(AADAC)、 コレステロールエステラーゼ(CholE)およびパラオキソナーゼ (PON)の種差、臓器差が大きな問題となっている。 本研究ではこの問題を解決するために、それぞれの変換酵素について、ヒトと動物間での基質特異性の差異を調べるために変換酵素別のプロドラッグ代謝モデル臓器細胞を作成し、さらに実際にプロドラッグの合成を行うことで、プロドラッグの構造と変換酵素の構造活性相関の検討も試みた。 今年度は、特にプロドラッグの合成を中心に検討した。今回の実験においては、リード化合物としてアトルバスタチン、インドメタシンおよびハロペリドールを用い、生体内の代謝活性化酵素としCES、AADACおよびPONを中心に用いて検討を行った。その結果、モノエステル型であるインドメタシンプロドラッグは肝臓で効率的に代謝活性化され、さらにCES1A1が主要な代謝酵素であることが判明したが、エステル-エステル型および炭酸エステル型のインドメタシンプロドラッグは、肝臓と小腸で同程度の代謝活性化能で大きな差異は認められなかった。ハロペリドールのプロドラッグはヒト肝およびヒト小腸において構造、あるいは電子密度の違いにより代謝活性化能が大きく変化することが明らかとなった。アトルバスタチンプロドラッグにおいては、AADACおよびPONの関与も明らかとなった。 以上の結果より、本研究においては、アトルバスタチン、インドメタシンおよびハロペリドールの置換基の違いによる代謝活性可能の変化を明らかにしたことから、臨床医薬品開発におけるリード化合物の最適化に伴う構造活性相関に関わる新規の知見を得ることが出来た。
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