研究課題
平成30年度の研究を通して、以下の成果を達成した。1. 平成29年度、ソフト及びハードな性質を有する反応性代謝物(RM)を同時に検出できる新規の蛍光標識トラッピング剤を2種類合成したが、化合物によってはRMを効率的に捕捉できないものもあった。平成30年度はその原因究明のため、合成したトラッピング剤のCYP阻害能を評価したところ、CYP3A4を強力に阻害することが明らかになった。そこで、新たにカルボキシ基を導入し疎水性を低下させたトラッピング剤をデザインし合成した。期待通りCYP阻害能は低下し、広範なRMを効率的に捕捉できる新規トラッピング剤の創製に成功した。2. 平成29年度、抗炎症薬ジクロフェナクのカルボキシ基周辺にメチル基を導入した誘導体を合成し、RMであるアシルグルクロニドの生成を抑えることに成功したが、薬効であるCOX阻害活性は減弱した。そこで平成30年度は、もう一つの代謝活性化機構であるキノイミン生成を抑えるために芳香環にフッ素を導入した化合物を3種類合成した。そのうち2化合物は期待通りキノイミン生成が抑えられ、COX阻害活性も維持することが示され、毒性を回避した改良型ジクロフェナクの創製に成功した。3. 平成30年度より新たに抗肥満薬リモナバンのRM生成を抑えた誘導体合成に着手した。ピペリジン環を様々な環に変換した化合物を合成し、まず代謝活性化の指標となるCYP3A4の時間依存的阻害を調べた結果、一部の化合物では阻害能が減少した。また、シアン化物イオンを用いたトラッピング試験でも、リモナバンに比べアダクトの生成が抑えられる化合物を見出した。以上の成果は、平成29年度までに行った改良型ベンズブロマロンに関する創製戦略とともに、本手法により安全性の高い医薬品の創製が可能になることを示しており、創薬現場のメディシナルケミストにとっても有用な知見になると思われる。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Bioorg Med Chem Lett
巻: 28 ページ: 3708-3711
10.1016/j.bmcl.2018.10.023