研究課題
本研究の目的は「ヒト血液脳関門(BBB)のプロトン-有機カチオン(H+/OC)交換輸送系の薬物分子認識性および実体を解明すること」であった。昨年度は異なるBBB細胞(ヒトiPS細胞由来脳毛細血管内皮細胞(hiPS-BMECs)とヒト不死化脳毛細血管内皮細胞(hCMEC/D3))におけるトランスポーター遺伝子の発現解析とH+/OC交換輸送系の活性について検討した。その結果、hiPS-BMECsとhCMEC/D3細胞では既知トランスポーター分子の発現に差異がみられたものの、両細胞でH+/OC交換輸送系の輸送能は保持していることがわかった。本プロジェクトと平行して、我々の研究グループはfunctional based molecular cloning (FBMC)法を開発し、H+/OC交換輸送系の輸送活性が大きく異なるクローンを選別した。このクローン細胞を用いて、差分解析によりH+/OC交換輸送系の分子実体の解明を試みた。まず、FBMC法で得られた31の候補分子の遺伝子をsiRNAでノックダウンし、H+/OC交換輸送系の基質であるバレニクリンの取り込みを測定した。その結果、9種のノックダウン細胞でバレニクリンの取り込みがコントロールに比べて有意に減少した。次に、この中の6種の遺伝子の過剰発現細胞をHEK293細胞で作製し、バレニクリンの取り込みを測定した。導入した遺伝子はいずれも1000倍以上過剰発現していることが確かめられたが、バレニクリンの取り込みについては有意な上昇はみられなかった。以上、本研究の最終目標であるH+/OC交換輸送系の分子同定には至らなかったものの、基質認識性、FBMC法の開発など多くの重要な知見が得られた。
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