研究実績の概要 |
細胞組織製品の有効性を保証することは重要である。本研究よりヒト骨髄由来間葉系幹細胞は、血管内皮増殖因子(VEGF)の分泌によって誘導される心筋回復効果を有することを報告し、VEGF分泌を調節する遺伝子(VEGF分泌関連候補:VSR7)を同定した。ヒト脂肪由来幹細胞(hADSC)を用いてVEGF分泌におけるVSR7の役割を研究した。VSR7をノックダウンしたhADSC(3ロット)を作製した後、それらを正常または低酸素条件下で培養し、ELISAを用いてVEGF分泌量を測定した。hADSCも正常または虚血条件下で培養し、PCRを用いてHIF1α感受性遺伝子発現量を測定した。RNAiによるVSR7遺伝子の遺伝子ノックダウン率は38~53%であった。VSR7ノックダウン後,VEGF分泌量は減少し,VRS7レベルとVEGF分泌量との関係を認めた。さらに、VSR7ノックダウン後、虚血条件下でVEGFおよびHIF1α遺伝子発現レベルは低下した。これらの知見は、VSR7がhADSCにおけるHIFの効果を制御することによってVEGF分泌を調節することを示唆すると考えられた。 一方で安全性の保証として、再生医療で用いられるヒト細胞加工製品の製造において、交差汚染によるがん細胞の混入や、形質転換を起こした造腫瘍性細胞の発生は安全性上の大きな問題となる。製品中の悪性形質転換細胞の混在は、軟寒天コロニー形成試験による足場非依存性増殖細胞の検出などによって評価が可能であるが、軟寒天培養は多層からなる寒天培地の調製など、繁雑な操作が必要となるため、試験法の改良が期待されている。我々は、ヒト細胞加工製品中に混在する悪性形質転換細胞を、軟寒天コロニー形成試験よりも簡便かつ効率的に検出するための新たな試験系の確立を目的とし、新規ポリマーLA717を添加した培地を利用する新しい三次元培養法による評価法を検討した。
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