研究課題
家族性の統合失調症において、多くの糖代謝、脂質代謝酵素に異常が見つかっていることに注目し、統合失調症患者の血液を用いてバイオマーカーを探索した。28-29年度までの検討において、複数の患者赤血球中で、メチルグリオキサール(MGO)を前駆体として生成するアルグピリミジン(ARP)構造を有する糖化タンパク質の蓄積を見出したことから、MGOが糖化ストレスの原因物質である可能性が推定された。最終年度は、血液中診断マーカーとして、統合失調症患者血漿を試料としてMGOを測定すると共に、MGOの代謝に焦点を絞り、構築されたカルボニルストレス性統合失調症モデルマウス(食餌制限を受けたGLO1ノックアウト)を用いて予備検討を行った。その結果、特異的な低分子カルボニル化合物としてモデルマウス脳中においてMGOレベルの有意な上昇を見出した。それを前駆体とする糖化タンパク質が前頭前皮質、海馬、脳幹及び線条体で局所的に蓄積していることが判った。この結果から、今後、MGOにより糖化を受ける脳内のタンパク質を同定し、その影響を明らかにすることが、カルボニルストレス性統合失調症の発症機序解明の上で重要な位置を占めることが示唆された。3年に渡る研究から、①患者血漿中のカルボニル化タンパク質量が有意に高く、若年ほどその傾向が顕著であり、特にIgG軽鎖及びアルブミンのAGEs化が亢進していることを明らかにした。②原因物質の1つと考えられたMGOに対する高感度な定量法を開発した。③複数の患者赤血球中でARP化したタンパク質の蓄積を発見し、そのタンパク質を同定した。④カルボニルストレス性統合失調症モデルマウスを用いた予備検討において、特異的な低分子カルボニル化合物として、予想していた脳内MGOレベルの有意な上昇を見出した。以上の成果は、カルボニルストレス性統合失調症の診断、治療の橋渡しに繋がるものと考えられる。
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