研究実績の概要 |
前年度よりの課題である毛髪中のホモシステイン類の高効率かつ高精度な抽出法の確立を目指して条件の検討を行っている。前年度末に毛髪を酸あるいはアルカリにより溶解し、溶出したホモシステイン類がホモシステインチオラクトンの形状になっていると予想していた。 これを踏まえて、ホモシステインチオラクトン標準品を用いて、蛍光誘導体化試薬である 4-(N,N-dimethylaminosulfonyl)-7-fluoro-2,1,3-benzoxadiazole (DBD-F)を用いて誘導体化を行ったところ、ホモシステイン標準品を用いた場合と同じ保持時間のピークを得た。毛髪試料からはホモシステインのピークは検出されなかったことから、酸およびアルカリ溶解によってホモシステインチオラクトンとして溶出されないことが分かった。 次に対象を毛髪内の含硫タンパク質にジスルフィド結合を介して保持されているホモシステイン類を還元により溶出させ、これを誘導体化後、定量する方針をさらに詳細に検討することを行った。具体的には、還元剤として水素化ホウ素ナトリウム、ジチオエリスリトール(DTE)およびトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)を用いてホモシステイン関連化合物の溶出を試みた。還元剤濃度、反応温度および時間を検討し、50 mM TCEPを用いて80℃、15分で還元をすることで毛髪中のメチオニンおよびシステインを定量可能であった。残念ながらホモシステインを検出することはできなかった。 今後は、LC-MS/MSを用いて検討を重ねていく予定である。
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