研究課題/領域番号 |
16K08393
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
関根 祐子 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (30567350)
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研究分担者 |
高野 博之 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (60334190)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 在宅医療 / 心不全 / 薬剤師 |
研究実績の概要 |
(1)在宅心不全患者の薬学ケアを実践するために必要な能力の獲得 全5回の講習会と1回の公開講座を開催した。講習会には、延べ194名の薬剤師が参加した。講習会の内容は、講義2回、フィジカルアセスメント演習1回、症例検討ワークショップ3回(講義と同時開催あり)であった。参加者に対するアンケート調査の結果、講習会の内容、時間、わかりやすさなどすべての項目において、ほとんどの参加者から「適切」、「業務に活かせそう」、「自分のニーズに合っていた」との回答が得られ、参加者の満足度は高く、現場の薬剤師にとって必要な内容であったことが明らかとなった。公開講座は、心不全の在宅医療を実践できる薬剤師の育成プログラム、薬剤師の在宅医療の活動、訪問看護師が在宅医療の現場で薬剤師に期待すること、千葉市の地域包括ケア推進など、薬剤師だけでなく他職種や行政の立場からの講演もあり、薬剤師のみならず地域住民も対象に開催した。全84名の参加があった。 (2)在宅医療現場での実践 上記講習会受講者のうち、薬局での実習を希望した21名に対し在宅同行実習を行った。千葉県内で在宅業務を行っている8薬局に実習への協力を依頼した。実習内容は、受講者のレベルとニーズに合わせて調整した。参加者は在宅経験のない薬剤師と在宅経験のある薬剤師が半数であり、現場を見ることができ満足したとの意見が多く寄せられた。 (3)e-ラーニング用症例の作成 対話型e-ラーニングシステムe-PDEを用いたe-ラーニング用症例を作成した。症例は、大学教員と在宅医療を実践している薬剤師が共同して作成した。また、症例は患者とのコミュニケーショントレーニングと症例解析トレーニングが組み合わせて実施できるよう工夫して作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)在宅心不全患者の薬学ケアを実践するために必要な能力の獲得 全5回の講習会と1回の公開講座を開催した。講習会への参加者は毎回37名~42名と一定の参加者数を確保している。また、講習会の形式は、講義2回、フィジカルアセスメント演習1回、症例検討ワークショップ3回(講義と同時開催あり)であり、バランスの良いカリキュラムとなっている。さらに、参加者からのアンケート調査の結果、講習会の内容、レベル、時間配分、講師の選択、などについて高い満足度が得られ、本カリキュラムが現場の薬剤師にとって必要な内容であったことが明らかとなった。また、薬剤師だけでなく地域住民も対象に開催した公開講座は、他職種や行政の講演があったことから、薬剤師も多数参加し活発な討論が行われた。講習会以外にも、在宅医療に関する広い知識を獲得することは有意義であることが明らかとなった。以上より、在宅心不全患者の薬学ケアを実践するために必要な能力の獲得に関しては、受講者のニーズや満足度も高く、予定通り順調に進展していると考えられる。 (2)在宅医療現場での実践 在宅医療現場での薬剤師同行実習の受講者21名へのアンケート調査の結果、在宅医療を行っていない薬剤師からは「見学できて勉強になった」、在宅医療を行っている薬剤師からは「他薬局の方法がわかり勉強になった」との意見が寄せられ、現場での実習の満足度は高く、予定通り進展していると考えられる。 (3)e-ラーニング用症例の作成 e-ラーニングシステム・e-PDE用の症例を作成した。症例は、大学教員と在宅医療を実践している薬剤師が共同して作成し、患者とのコミュニケーショントレーニングと症例解析トレーニングが組み合わせて実施できるよう工夫されている。1症例のみの作成であり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)在宅心不全患者の薬学ケアを実践するために必要な能力の獲得 引き続き、講習会や公開講座を継続して実施する。講習会のプログラムは平成28年度の実施結果でおおむね固まったので、内容は継続する。平成28年度は千葉市を中心に受講者の募集を行ったが、平成29年度は千葉市以外の地域にも積極的に広報し、受講者数を増やして実施する。 (2)在宅医療現場での実践 引き続き、協力薬局での在宅医療実習を行う。平成28年度は、実習内容を参加者のレベルやニーズに合わせて決定したが、平成29年度は、実習内容を具体的に検証し、参加者に合った実習内容を設定するための基準を作成する。さらに、薬局での実習に加え、ケア会議など多職種合同の地域でのカンファランスにも参加し、在宅医療現場でのスキルを実践する。 (3)e-ラーニング用症例の作成 在宅で起こりうる色々な状況を学べるよう、作成症例数を増やす。症例は、薬物治療に特化したもの、患者の社会的問題に焦点を当てたものなど、在宅医療で起こりうる問題点ごとに数種類作成する。さらに、作成したe-ラーニングを薬剤師にやってもらい、改良版を作成するとともに、コミュニケーションや症例解析トレーニングの評価法を作成する。
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