研究課題/領域番号 |
16K08394
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
永田 将司 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 准教授 (40412829)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 副作用 / 血糖値 / クロザピン / オランザピン / Pharmacokinetics / Pharmacodynamics / 速度論モデル |
研究実績の概要 |
薬物による血糖値異常のメカニズムを解明するとともに、薬物、各種生体内因子および血糖値の相互を関連付ける機構論的速度論モデルの構築を目指し、以下の検討を行った。 非定型抗精神病薬であるクロザピンを2.5、5、または10 mg/kgラットに静脈内投与したところ、いずれの投与量においても血糖値は上昇し、概ねクロザピン投与後60分で最大値を呈した。クロザピン投与後15分から240分まで測定したクロザピン血清中濃度は、検討した用量の範囲でほぼ線形の動態を示した。観察されたクロザピン血清中濃度は、ヒトにおける治療トラフレベル(350-600 ng/mL)を包含するものであった。また、血糖値上昇に関わる内因性物質であるエピネフリン、コルチコステロン及びグルカゴンは、いずれもクロザピン投与により上昇が見られた。以上の結果より、クロザピン単回投与による血糖値上昇にはこれらの内因性物質濃度の増加が関与していることが示唆された。また、クロザピンの治療域でも血糖値を上昇させる可能性があることから、クロザピン投与中は注意深い血糖値モニタリングを行う必要があると考えられた。 さらに、同系統の抗精神病薬であるオランザピンは、グルカゴン濃度に影響を与えていないことをすでに我々は報告しており(Biol Pharm Bull, 2016;39(5):754-61)、クロザピンによる血糖値上昇のメカニズムはオランザピンとは異なることが示唆された。 これらの結果は、薬物による血糖値異常のメカニズムを解明する有用な基礎的知見となると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
薬物による血糖値異常のメカニズムを解明するために、まずはクロザピンを用いた検討を進め、クロザピンによる血糖値異常に関与する可能性のある生体内因子を明らかにすることができた。さらに、クロザピンによる血糖値異常のメカニズムは、同系統の非定型抗精神病薬であるオランザピンとは異なる可能性を見出し、これらの研究成果は機構論的速度論モデルを構築するための有用な基礎的知見となるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、クロザピン投与により変化を見せたエピネフリンやグルカゴンなどの生体内因子のうち、いずれが血糖値異常に関与しているかを明らかにする。血糖値異常のメカニズムを明らかにした上で、クロザピンによる血糖値異常の速度論モデルの構築を目指す。 さらに、薬物長期投与後に見られる血糖値異常や、各種病態時における薬物による血糖値異常について検討し、これらの機構論的速度論モデルの構築を目指す。最終的に、病態変化や薬物長期投与による生理的変化を考慮した、多用な薬物による血糖値異常の予測を目指す。
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