研究課題/領域番号 |
16K08398
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
古俵 孝明 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 薬剤師 (50627817)
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研究分担者 |
東 高士 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 薬剤師 (40623773)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | βグルクロニダーゼ / 脱抱合反応 / 腸肝循環 / 相互作用 / ピペラジン骨格 |
研究実績の概要 |
既に報告されているβグルクロニダーゼの阻害活性を有する薬剤から臨床現場で使用されている医薬品に限定してイリノテカン代謝物(SN38G)の脱抱合反応における阻害効果について検討を行った。 対象薬剤は、βグルクロニダーゼに対して阻害効果を示すアモキサピン(Clin.Cancer.Res.30:3521-3530,2014)を含む抗うつ薬。メフロキン(J.Biomol.Screen.17:957-965,2012)を含む抗マラリア薬、駆虫薬。シプロフロキサシン(Basic.Clin.Pharmacol.Toxicol.118:333-337,2016)を含むニューキノロン系抗菌薬とした。 抗うつ薬(アモキサピン、ロキサピン、ノルトリプチリン、クロミプラミン、ミアンセリン)共存下におけるβグルクロニダーゼを介したSN38GからSN38への脱抱合反応はアモキサピン共存下でほぼ完全に阻害された。またノルトリプチリン共存下ではわずかな阻害が認められたが、他の抗うつ薬では阻害は認められなかった。一方、抗マラリア薬(メフロキン、キニーネ)と駆虫薬(メトロニダゾール)共存下におけるβグルクロニダーゼを介したSN38GからSN38への脱抱合反応はメフロキン共存下においてもほぼ完全に阻害された。しかしながら、キニーネやメトロニダゾール共存下では阻害は認められなかった。また、シプロフロキサシン共存下におけるβグルクロニダーゼを介したSN38GからSN38への脱抱合反応は有意な阻害が認められたが、その阻害効果は同濃度のアモキサピンやメフロキンと比較すると軽度であった。 アモキサピンやシプロフロキサシンは分子構造上にピペラジン骨格を有している。また、メフロキンの分子構造上にはピペラジン骨格を持たないが同様にβグルクロニダーゼに対して強力な阻害活性を示していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では、阻害活性を示す薬剤のスクリーニングを終了して、次年度より脱抱合反応に用いる基質を変更し、検討を行う予定であった。しかし、測定機器のメンテナンスや試薬の購入に時間を要したこと。当初製薬会社より提供予定であった、基質が一部提供されなかったことから試薬購入費が増加し研究費が不足したために、当初予定していた複数のキノロン系抗菌薬とセフェム系抗菌薬の検討が終了していない。
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今後の研究の推進方策 |
まず、次年度前半には脱抱合反応によるスクリーニングを終了し、臨床現場で使用されているβグルクロニダーゼ阻害剤を抽出する。その後、イリノテカン代謝物(SN38G)、エゼチミブ代謝物(グルクロン酸抱合体)の基質を用いて脱抱合反応におけるβグルクロニダーゼの阻害効果について、当初の予定通り時間経過に伴う影響、濃度依存的な影響、阻害様式について検証し、阻害強度について評価する。また、一部基質が入手不可能となった薬剤(ミコフェノール酸代謝物)については、腸肝循環の寄与が大きいグルクロン酸代謝物等の条件が合致する他の薬剤があれば、製薬会社へ試薬の提供を依頼する。次年度の研究が予定通り進まない場合には、調査期間を延長して、次々年度以降も調査を継続する。本研究期間は4年間の予定だが、研究3年目は、阻害剤の分子構造に対する阻害効果への影響を調査することを目的としているため、2~3年目の研究内容を同時に行うことで当初の予定期間内で調査研究を進めることが可能である。
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