研究課題
29年度に行った検討結果を踏まえ、βグルクロニダーゼを介したグルクロン酸の脱抱合を阻害する薬物について阻害強度の検討を行った。具体的にはミコフェノール酸のグルクロン酸抱合体(MPAG)の脱抱合モデルを作成し、βグルクロニダーゼによるミコフェノール酸(MPA)への脱抱合反応に対する阻害剤共存下の影響について検討を行った。阻害剤にはフェノールフタレインβグルクロニド(PhePG)、エゼチミブグルクロニド(EZMG)、SN38グルクロニド(SN38G)、グルクロン酸構造を有するバイカリン(Baicalin)、アモキサピン(AMOX)、シプロフロキサシン(CPFX)の6剤を用いた。評価項目としてIC50値を算出し、各薬剤の阻害強度について評価した。最初にMPAGの濃度条件下におけるMPAの生成量を測定し、0次反応時間内での速度論的な解析を行ったところ、Vmax値は61uM/min、Km値は1422uMと算出された。次にMPAGをKm値付近で固定し、阻害剤の濃度条件下における脱抱合への影響を検討することで阻害剤のIC50値を算出した。その結果、各阻害剤のIC50値は1.0uM(AMOX)、17.4uM(CPFX) 、111.2uM(Baicalin)、217.5uM(PhePG)、306.2uM (SN38G)、340.6uM(EZMG)でありグルクロン酸構造を持たないAMOXやCPFXのIC50値は低濃度で阻害を示すことが明らかになった。グルクロン酸抱合体の脱抱合反応はAMOXやCPFXのように分子構造内にピペラジン骨格を有する薬物が強く影響することから、臨床現場でのミコフェノール酸の血中濃度変動に影響している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
年間計画通り基礎実験は終了した。今後は臨床データの収集とその評価について検討を行う準備段階に移行している。
臨床でのグルクロン酸抱合体の寄与が大きい薬物(ミコフェノール酸やイリノテカンなど)の投薬歴がある患者を抽出する。29年度に検討した阻害剤について併用群と非併用群における薬物の血中濃度変動や、副作用の重症化率について調査を行うことで臨床現場への影響を検討する。
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