研究課題
A.トリクロホスナトリウムの薬物動態と薬効解析:トリクロホスナトリウムが投与された小児患者55名から得られたトリクロエタノール血中濃度169点と鎮静の指標であるCOMFORT behavior scaleの測定242点を解析に用いた。NONMEMを用いた母集団薬物動態解析の結果、体重に加えて血中総ビリルビン値が変動因子として抽出された。またROC解析の結果、COMFORT behavior scale16の鎮静深度に必要な血中濃度は17.2 mg/Lであった。この値を基に、十分な鎮静効果を得るために必要なトリクロホスナトリムの投与量をシミュレーションにより算出し、年齢別投与量ノモグラムの作成を行った。B.生体肝移植時のタクロリムス薬物動態のPBPKモデル解析:PBPKシミュレーションソフトSimcypを用いて予測したタクロリムス血中濃度と生体肝移植患者から得られた実測値には乖離が認められたため、その原因について検討した。その結果、肝臓のCYP3A4発現量を文献値に変更することで、小腸及び肝臓のCYP3A5遺伝子型の違いに関わらず生体肝移植後の血中濃度の予測値が実測値に近づくことが示唆された。C.腎移植患者におけるタクロリムス薬物動態解析:腎移植患者31名を対象に後方視的解析を行った結果、術後2週目までの目標トラフ値の達成率は、手術翌日では3.2%で高濃度域となる患者が多く、術後1週間で35.5%、術後2週間で71.0%であった。また、個体間変動因子として、CYP3A5遺伝子型の影響が大きいため、遺伝子型を考慮したプロトコル再構築の必要性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
生体肝移植後の肝再生とCYP3A5遺伝子多型の影響を定量的に示す生理学的モデルの精密化に成功している。また、トリクロロエタノールの薬効解析や腎移植患者のタクロリムスの薬物動態解析を行った。
生体肝移植患者におけるタクロリムスの生理学的モデルについては、論文化を進める。トリクロロエタノールについては、新規臨床データを追加した後、小児患者における薬物動態・薬効の再解析と投与量のモグラムを作成し、論文化を行う。腎移植時のタクリムス薬物動態についてPBPKモデルの構築を行うとともに、CYP3A5遺伝子型に応じたタクロリムス投与量個別化の前向き試験を計画する。
旅費について別経費での支払いとなったため、次年度使用額が生じた。消耗品及び研究発表のための旅費として使用する。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (2件)
Biol. Blood Marrow Transplant.
巻: - ページ: 印刷中
10.1016/j.bbmt.2018.01.040
Bone Marrow Transplantation
巻: 53 ページ: 44~51
10.1038/bmt.2017.213
Ther. Drug Monit.
巻: 39 ページ: 124~131
10.1097/FTD.0000000000000383
臨床薬理の進歩
巻: 38 ページ: 71-78
医薬ジャーナル
巻: 53 ページ: 2315-2319
http://www.hosp.kobe-u.ac.jp/yakuzai/Pharm/kobepharm.html#
http://www.med.kobe-u.ac.jp/yakudo/