研究課題/領域番号 |
16K08403
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
千堂 年昭 岡山大学, 大学病院, 教授 (30437561)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳内自己刺激行動 / 報酬志向性行動 / 神経細胞 / グリア細胞 |
研究実績の概要 |
本年度は、意欲関連行動である脳内自己刺激行動のRunway法における報酬獲得のための走行行動を行わせたラット脳を用いて、脳内神経細胞および脳内グリア細胞の発現量変化を免疫組織化学的手法を用いて複数の脳部位で定量的に測定した。本研究で評価した脳部位は記憶に関連する海馬および報酬や動機づけに関連する側坐核とし、神経細胞の判定マーカーとしてNeuN、グリア細胞のうちアストロサイトのマーカーとしてGFAP、ミクログリアのマーカーとしてIba-1を用いた。また、対照群として全く脳内刺激を与えないcontrolおよび脳内自己刺激行動と同等の電気刺激を実験者による外部操作で与えるstimulation群を設定した。Runwayの走行行動を15分間、繰り返し行わせてラットが獲得した電気刺激数を記録し平均刺激回数を算出し、stimulation群の動物には平均刺激回数の刺激を与えた。 その結果、Runway法の走行行動を行わせた動物(Runway群)およびstimulation群ではcontrol群と比較して側坐核領域におけるNeuN陽性細胞数の増加が認められた。グリア細胞のうち、GFAP陽性細胞の細胞面積は海馬および側坐核の両領域でstimulation群及びRunway群はcontrol群と比較して細胞面積の増大が認められ、特にRunway群の増大の程度が大きかった。Iba-1陽性細胞については、側坐核領域においてのみ同様にstimulation群およびRunway群で陽性細胞の細胞面積の増大が認められた。 以上の結果から、報酬関連行動は脳内海馬および側坐核領域における神経およびグリア細胞に構造変化を生じ、報酬志向行動(意欲行動)は脳内に大きな変化を与える可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
電気刺激装置の不調のため、動機づけ行動の実施ができなかった期間がある。動機づけ行動の実施と脳サンプルの作成が本研究の律速であるため、研究遂行に支障が出た。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果より、側坐核および海馬領域において神経およびグリア細胞に何らかの変化が生じ、これが報酬獲得行動に関連する可能性が明らかとなった。今後は、細胞学的な変化が脳内にどのような機能変化を生じているのか、各種受容体等の発現量を評価する。また、より定量性の高い生化学的手法を用いて追試する予定である。
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