研究課題
本研究では、各種精神神経疾患治療薬に対する個別化投与設計法を目指して、以下の検討を行った。【検討1】カルバマゼピン(CBZ)は最も使用頻度の高い抗てんかん薬の一つであり、気分障害治療薬としても使用される。CBZはCYP3Aで主に代謝されると同時に、CYP3Aの誘導(自己誘導)作用を有する。以上の背景より、本研究では健康成人とCBZを服用するてんかん患者を対象として、CBZ誘導条件下でのCYP3A活性の個人差に及ぼす各種遺伝子多型の影響とその臨床的意義について検討した。その結果、CBZ服用患者でのCYP3A活性の個人差にHDAC1の遺伝子多型が影響することを証明した。さらにHDAC1の遺伝子多型は、自己誘導を考慮したCBZの体内動態パラメータに影響したことから、CBZによるCYP3A誘導の程度にも大きく寄与し、同時にCBZの治療効果の獲得を目的とした推奨投与量の決定にも重要であることを解明した。【検討2】パロキセチン(PAX) は、臨床で広く用いられる抗うつ薬であり、薬物代謝酵素cytochrome P450 (CYP) 2D6で主に代謝される。CYP2D6には多くの遺伝子多型が存在し、特にその活性を中程度低下させるCYP2D6*10はアジア人において頻度が高い。本研究では母集団薬物動態(Pop PK)解析の手法を用いて、日本人うつ病患者でのPAXのpop PKパラメータとCYP2D6遺伝子多型の影響を検討した。その結果、CYP2D6*10/*10遺伝子型では投与量を漸増しても血中PAX濃度は上昇しにくく、治療効果を得るまでに時間を要する可能性が示唆された。【検討3】抗精神病薬クロザピンとその代謝物の体内動態パラメータに対する、薬物代謝酵素CYP1A2、核内受容体AhR、電子伝達系補酵素PORの遺伝子多型を考慮した母集団薬物動態解析を開始した。
2: おおむね順調に進展している
本研究の対象となる精神神経疾患治療薬について、研究実績に記載した通り、一部ではあるが個別化投与設計のための解析を進めており、その他の対象薬についても順調に臨床情報等の収集が進んでいるため。
今年度の研究を継続すると同時に、他の対象薬についても母集団薬物動態―薬力学解析を開始する。また、本研究で特に注目する薬物有害反応である生活習慣病についても、一般住民との比較も含めて、モデリング並びにシミュレーションを行う予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (29件) (うち招待講演 12件)
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