研究課題
平成29年度は、各種精神神経疾患治療薬に対する個別化投与設計法を目指して、以下の検討を行った。【検討】パロキセチン(PAX)は、最も頻用される抗うつ薬の一つであるが、その治療効果および副作用発現に大きな個人差が存在する。本検討ではPAXを服用するうつ病患者86名を対象として、PAX投与後のうつ病寛解率と血中薬物濃度の関係を母集団薬物動態(PK)-薬力学(PD)解析の手法により検討した。ロジスティクス回帰式を基にした、PAXの投与開始時からの総曝露量とうつ病寛解率に関するPK-PDモデルを構築したところ、PAXの総曝露量の上昇に伴い、うつ病寛解率が上昇することが示された。最終モデルのLogit値を用いて、うつ病寛解の有無を予測するROC曲線を作成した結果、極めて良好な予測が出来ていたことから(ROC 曲線下面積:0.987、感度:94.4%、特異度:95.7%、P < 0.01)、血中PAX濃度による治療効果の予測が可能となることが示された。【検討2】バルプロ酸(VPA) は、臨床で広く用いられる抗てんかん薬であるが、長期投与による体重増加や脂肪肝等の副作用が問題となる。本検討では、VPAを服用するてんかん患者84名を対象に、母集団PD解析の手法により、遺伝子多型や併用薬などがVPA服用小児てんかん患者のBMIに及ぼす影響の程度を検討した。その結果、VPA誘発性の体重増加にCYP2C19とBDNF遺伝子多型が影響し、各遺伝子型毎の体重増加のリスクを予測できることを解明した。【検討3】抗精神病薬クロザピンとその代謝物の体内動態パラメータに対する、薬物代謝酵素CYP1A2、核内受容体AhR、電子伝達系補酵素PORの遺伝子多型を考慮した母集団PK解析を開始し、各遺伝因子のPKへの影響を検討中である。
2: おおむね順調に進展している
本研究の対象となる精神神経疾患治療薬について、研究実績に記載した通り、一部ではあるが個別化投与設計のための解析を進めており、その他の対象薬についても順調に臨床情報等の収集と解析が進んでいるため。
今年度の研究を継続すると同時に、他の対象薬についても母集団薬物動態―薬力学解析を開始する。また、本研究で特に注目する薬物有害反応である生活習慣病についても、一般住民との比較も含めて、モデリング並びにシミュレーションを行う予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
CPT:Pharmacometrics & Systems Pharmacology
巻: - ページ: -
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