研究課題
本研究では、各種精神神経疾患治療薬に対する個別化投与設計法を目指して、以下の検討を行った。【検討1】てんかんや双極性障害、片頭痛等に広く用いられるバルプロ酸は、その長期使用で体重増加を高頻度に生じることから、服薬アドヒアランスの低下や生活習慣病の発症をきたす。しかし、バルプロ酸による体重増加には個人差が大きいため、その発症を事前に予測することは困難である。そこで本研究では、バルプロ酸を服用する小児てんかん患者で、body mass index (BMI) 変動の個人差を規定する要因を明らかにすることを目的に、母集団薬効動態解析の手法を用いて、遺伝子多型や併用薬等の患者背景を考慮したBMI変動予測モデルの構築を試みた。本研究で構築したBMI変動予測モデルにより、バルプロ酸を服用する女性患児ではCYP2C19遺伝子型が体重増加に関係することを明らかにし、本結果がバルプロ酸の体重増加に対する予防的介入へと繋がることが期待された。【検討2】臨床で広く使用される選択的セロトニン再取り込み阻害薬パロキセチンについて、その薬物動態パラメータと、モンゴメリー・ アスベルグうつ病評価尺度 (MADRS) を用いた抗うつ効果の評価結果との関係を表した薬物動態―薬力学モデルを構築した。その結果、パロキセチンの暴露量と治療反応性が関係することを解明し、当該薬物の血中濃度により治療効果を早期に予測できる可能性を明らかにした。【検討3】抗精神病薬クロザピンとその代謝物の体内動態パラメータに対する、薬物代謝酵素CYP1A2や核内受容体AhR等の遺伝子多型を考慮した母集団薬物動態解析を行い、日本人統合失調症患者におけるクロザピン及びその活性代謝物の母集団薬物動態パラメータを算出・予測し、難治性統合失調症に対して使用されるクロザピンの治療最適化への応用が期待された。
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