研究実績の概要 |
サルのポリオーマウイルスであるsimian virus 40 (SV40) は、ウイルス粒子を構成する5つのVP1タンパク質が集合化してVP1五量体を形成し、このVP1五量体が72個集合化して直径45 nmの正二十面体構造を形成する。我々は、昆虫細胞でSV40 VP1のみを発現させることでウイルス様粒子 (VLP, virus-like particle) を形成させる技術を開発した。さらに、昆虫細胞内で形成されたSV40 VLPを高濃度かつ高精製度で調製する技術を構築した。本年度は、このSV40 VLPとマウスのリンパ球をインキュベーションし、マウスの腹腔に戻すことでマウスにSV40 VLPに対する抗体産生を誘導するための系の構築を行い、SV40 VLPに対して抗体産生を誘導するために必要な細胞の因子、細胞数、細胞量の精密化を行った。さらに、SV40 VLPの細胞内侵入経路においてSV40 VLPと相互作用する因子を同定したので、SV40 VLPとその因子との詳細な相互作用解析を行った。その結果、免疫沈降法やショ糖密度勾配遠心法による相互作用解析では、SV40 VLPと同定した因子との相互作用は検出されなかった。しかしながら、ショ糖密度勾配遠心法による解析では、シャペロンドメインを有する同定した因子とインキュベーションするとSV40 VLPの一部がVP1五量体に解離している可能性が示唆された。このことは、SV40 VLPが同定した因子のシャペロンドメインと相互作用し、SV40 VLPの一部がVP1五量体に解離した可能性を示唆している。このシャペロンドメインを有する同定した因子は細胞内シグナル伝達ドメインを有するとの報告があるため、SV40 VLPが同定した因子と相互作用することで、細胞内にシグナル伝達が誘導され、免疫担当細胞の活性化を誘導する可能性が示唆された。
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